トラの新主砲、ジャスティン・ボーアに待望の一発が出たのは6月2日。対外試合16試合目、41打席目での初アーチに阪神ナインもメジャー流のサイレント・トリートメントで祝福し、ボーアも大喜びだった。しかし、この一発には“ウラ”がありそうだ。
「ボーアは内角球に苦しんでいました。その内角球を仕留めての本塁打でした」(在阪記者)
第一打席は四球を選んでいる。第二打席でその一発を献上した広島の二番手右腕・藤井皓哉だが、昨季は持ち味である球威と制球力を失い、苦しいシーズンを送った。
「苦手の内角を突こうとし、攻めきれなかった感じ。真ん中近くにボールが来ていました」(球界関係者)
プロ通算1勝、経験値の浅い藤井の失投を見逃さなかったとすれば、ボーアの勝ち。しかし、同時に周囲では「苦手の内角球について、ボーアのデータを取り直すために意図的に球速を落として投げたのでは?」といった声も聞かれた。
「2018年に来日したウィリン・ロザリオのケースが思い出されます。推定年俸は3億4000万円で、金本知憲監督(当時)も期待していましたが、キャンプ、オープン戦で研究されつくして、オープン戦の終盤から全く打てなくなってしまいました。結果的に2割4分ほどの打率しか残せず(8本塁打)、1年で自由契約となりました。プロ野球の世界では、新戦力の攻略法を見つけるため、オープン戦で内外角のコースに多彩な球種を投げ、どんな反応を示すのか、スコアラーがチェックしています」(前出・球界関係者)
この広島戦に限った話ではないが、じつは同日からスタンドが一部開放され、各球団スコアラー、取材陣が間隔を空けて座っていた。2年前のロザリオの悪夢があるためか、ボーアの一発に懐疑的な見方をする阪神関係者もいないわけではなかった。
「対外試合が始まった2日は、どの対戦カードも大味な内容となりました。投手はマウンドの傾斜を楽しみ、バッターも真剣勝負を楽しんでいたというか…。まだ真剣勝負という段階ではないかもしれませんね」(前出・在阪記者)
開幕まで2週間あまり、実戦感覚を取り戻すための試運転という見方もできるが、ボーアの一発を巡るデータ収集の話が本当なら、各球団とも明らかにペナントレース本番を意識している。6月3日には同じ広島との練習試合で、2試合連続となるアーチを描いたボーアだが、「トラの新4番」として期待していいのか、もう少し様子を見てから判断したほうが良さそうだ。
(スポーツライター・飯山満)