新型コロナウイルスの感染拡大で多くの学校が休校となり、子どもが教育を受ける機会さえ奪われている。我が子の将来を想う親としては気が気でない状態が続いていると思うのだが、そこで一気に注目を集めているのが、ICT(情報通信技術)を活用したオンライン教育だ。
危機的な状況を看過できないとばかりに“リトルホンダ”が囁いたのだろうか、4月22日にサッカーの本田圭佑がオンライン教育ベンチャーに出資することが明らかになった。オンライン教育アプリの提供で「教育」と「テクノロジー」をかけ合わせた「EdTech」(エドテック)のスタートアップ企業の「Manabie International」(マナビー・インターナショナル)が、本田を含む複数の投資家やベンチャーキャピタルから約5億2000万円の資金調達を行ったと発表したのだ。マナビー・インターナショナルはオンライン学習アプリとオフラインの現実の学習スペースを組み合わせたサービスを提供している。日本人による会社だが、シンガポールに本社を置いてベトナムでサービスを展開中。今後は東南アジアを中心にサービスを展開していく予定だ。
オンライン教育はここ数年で市場が急拡大。2015年には市場規模は世界で5兆円規模だったものが、今年、2020年中には倍の10兆円にまで膨らむと見られている。日本でも2015年は1640億円だったのが、2400億円を超えるとされている。
ところが世界の趨勢を見た場合、近年の最新技術で世界を引っ張っているのはやはりアメリカと中国そしてインドで、日本は出遅れている。全世界のベンチャーキャピタルの投資額では、トップが中国の50%で、2位がアメリカの20%、3位インドが10%、ヨーロッパ8%で、これらの国で約90%が占められている。
「中国ではコロナ禍にあってあのアリババが、3省300都市と広域にわたってオンライン授業のサービスを提供しています。アメリカでは早くも08年にオンライン講座でEdTechのサービスが生み出されており、そのアメリカはあのハーバード大学などの有名大学の講義が世界中で受けられるシステムを立ち上げた先進国。インドは世界中で5歳から24歳までの人口が最も多くて伸びしろは無尽蔵にあります。もともとIT立国ですからね」(経済ジャーナリスト)
一方で日本の現状はどうかというと……。
「外出禁止が叫ばれる中、中小企業はリモートワークの環境が整っていない現状が盛んに言われているように、まずはパソコンやルーターが隅々まで行き渡っていない。現在の休校の中、オンラインでの対面指導が導入されている自治体は全国で5%にとどまっていることが文部科学省の調査で明らかになりました」(前出・経済ジャーナリスト)
小学校でのプログラミング学習が必修となることで知られる今年の20年から実施される「新学習指導要領」では、ICTの活用も重視されているが、実際には教室の無線LANが整っておらず、その前に教育委員会や教育行政側の無理解が全体を遅らせているという。そもそも土壌が整っていないのだ。
もともと教育にかける金が手薄と言われる日本、目の前の感染拡大防止策と休業補償の問題でも後手後手なのだから、ここで後手後手になるのも当たり前のことか。
(猫間滋)