「イチローは客寄せパンダ」発言のダンカンに教えたいアメスポの引退様式

 シアトル・マリナーズのイチローが、3月21日に東京ドームで開催されたアスレチックス戦を最後に、引退を表明した。前日にはシーズン開幕戦で先発出場しており、45歳149日での開幕先発は米メジャーで歴代2位の記録となった。

 そのイチローに全国から労いのメッセージが贈られるなか、虎党で知られるタレントのダンカンは21日に「とんだ茶番のイチロー」と題してブログを更新。「なんだこのシラケ・・ 最後が客寄せパンダって・・ くだらね~」との非難を寄せたのである。これに対して批判が殺到すると、今度は22日付のブログにて「オレが腹立たしかったのはペナントレース(公式戦)をイチローの引退試合にしたMLBやその周辺になんです!」と吠え、「ペナントレースの1試合は途轍もなく大切なものなんです」との自説を披露した。

 日本の野球ファンにはダンカンの意見に同調する者もいるようだ。だがアメリカのプロスポーツ事情に詳しいライターは、そんなダンカンに異を唱える。

「イチローがメジャーに残した足跡は、いくら強調しても足りないほどに偉大なのは誰の目にも明らか。その引退に際しては最高の場を用意すべきというのがアメリカ流の考え方です。さすがにイチローのように“引退試合”という場を与えられるケースは珍しいものの、アメリカの野球好きだったら今回の引退劇に拍手を送りこそすれ、ダンカンのようなイチャモンを付けることはありえないでしょう」

 そんなアメリカンスポーツでは選手の引退に際して、日本にはない慣習があるという。それは「1日だけの契約」というものだ。

「アメリカでは自分が最も愛着を持っているチームの選手として引退したいという、選手の意思を尊重するもの。各チームの所属選手はチームのニックネームを単数形にした名称で呼ばれ、イチローは『シアトル・マリナーとして引退』した形になります。もしイチローが現役生活の晩年でマリナーズに復帰していなかったとしたら、おそらくマリナーズと1日だけの契約を交わし、マリナーとして引退したことでしょう。そしてイチローはいずれ、メジャーでもプロ野球選手の殿堂(ホールオブフェーム)入りを果たすことは確実ですが、その際にもマリナーとしての殿堂入りになるはずです」(前出・スポーツライター)

 1日だけの契約を認められるのは、そのチームに多大な貢献のあった選手に限られる。そしてイチローの名前は今後、マリナーズと共に記憶され続けることとなるはずだ。

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