「大阪モノレール」の延伸決定に東大阪市民が困惑するワケとは?

 日本最長のモノレール路線として知られる大阪モノレールが、29年開業を目指して延伸されることが決まった。現在は大阪空港(伊丹空港)からパナソニックのおひざ元である門真市までの21.2kmを結んでいるが、これを南へ8.9km延伸し、近鉄奈良線と接続させるというもの。新設される4駅ではそれぞれ大阪メトロの長堀鶴見緑地線、JR西日本の学研都市線、近鉄けいはんな線、そして近鉄奈良線との乗り換えが可能になり、利便性は大いに向上する予定だ。

 その延伸により注目されているのが、大阪市のベッドタウンでもある東大阪市である。関西以外ではあまり知られていない地名だが、人口は50万人近くに及び、ラグビーの聖地である花園ラグビー場や、大阪府で最大の学生数を誇る近畿大学を擁するなど、関西での知名度は高い。また東京の大田区と比肩する町工場の集積度で知られ、09年に打ち上げられた小型人工衛星の「まいど1号」は同地に所在する中小企業の技術を結集した象徴として話題になった。

「かつてはどこに行くにも近鉄でいったん鶴橋や難波に出るしかなかった東大阪市ですが、09年には奈良線が新設された阪神なんば線と繋がり、神戸に直結。そしてこの3月16日にはJRおおさか東線が全線開通し、新幹線の新大阪駅まで乗り換えなしで結ばれることになりました。そして大阪モノレールが延伸されれば伊丹空港とも直結され、利便性は大きく向上します。地元でも『10年後?すぐやな!』と期待が高まっています」(トラベルライター)

 このようにいいことずくめに思える大阪モノレール延伸だが、一部の東大阪市民からは「迷惑やわ~」といったネガティブな反応も出ているというのだ。延伸を歓迎しないワケについて、トラベルライターが続ける。

「まずは新しい駅の位置です。大阪モノレールは近畿自動車道に沿って延伸されますが、そこが若江岩田駅と八戸ノ里駅のちょうど中間にあたるため、ここに瓜生堂駅(仮称)が新設されます。同駅は乗換駅となるので、優等列車が停車するはず。そのぶん、ただでさえ運航密度の高い奈良線の線路容量がひっ迫し、ラッシュ時の混雑が高まることが予想されます。奈良線は現在、関西の鉄道路線で混雑率が5位となっていますが、モノレール延伸後は阪急宝塚本線や阪急神戸本線を上回る恐れもありそうです」

 そしてもう一つの理由は、交通が便利になることで街としての魅力が増し、東大阪に住む人が増えることにあるという。それならよい話のような気もするが…。

「東大阪は府内でも治安のいいほうで、緑も多いことから子育てに向いていると評判です。ただ保育園に入れない待機児童は解消されていませんし、さらに住民が増えたら市民サービスの低下もありえます。そして人気が高まれば地価や家賃も高まりますから、もとからの住民にとっては痛しかゆしなのです」(在阪記者)

 関東でも利便性の向上した武蔵小杉駅(神奈川県川崎市)にタワーマンションが林立し、朝のラッシュ時には駅に入れないほどの混雑になるほか、この4月には小学校が新設されるなど小中学校の過密化も問題になっている。果たして東大阪は今後どのように変わっていくのだろうか。

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