4月11日、大相撲の元横綱の曙太郎さんが心不全で亡くなったことを複数のメディアが伝えた。54歳だった。
曙さんは米ハワイ州オアフ島出身。1993年、第64代横綱に昇進し、幕内通算11回の優勝を誇る。引退後はプロレスラー、総合格闘家としても活躍した。
異変が起きたのが2017年4月。プロレスの大会で訪れていた九州で体調不良を訴え、病院へ。急性心不全との診断で、一時は意識不明となった。なんとか一命を取り留め、都内の病院でリハビリを続けていた。
大相撲をはじめ、格闘技の世界で名を残してきた曙さんだが、ある野球選手とも意外なつながりがあった。
曙さんは17年2月、バラエティ番組「わざわざ言うテレビ」(テレビ大阪)に出演。ある野球選手とのエピソードを明かしている。曙が自身のしこ名の名付け親であるちゃんこ店の主人に大阪場所終了後、兵庫の有馬温泉に連れて行ってもらったときのこと。当時、高校の団体が同じ旅館に宿泊しており、曙さんはお風呂で高校生が一人、泣いているのを見かけた。曙はその高校生に話しかけたところ、高校生は「自分の失敗で試合に負けた」という。すると曙さんは「僕らの世界だと、相撲に勝って勝負に負けた、というときもある。泣くだけ泣いて、明日からまた頑張れよ」と励ましたというのだ。
その5年後、東京・国技館で取り組みを終えた後、記者に写真撮影をお願いされた曙は駐車場へ。そこには若い男性が立っており、曙さんが「はじめまして」と挨拶すると、その男性は「実は、初めてじゃないんですよ」と言い、有馬温泉の風呂で話しかけてもらった高校生だったことを明かしたという。その男性は、米メジャーリーグでも活躍したイチロー氏であった。
イチロー氏が高校生だった頃から5年後というと、オリックス時代ということになる。プロ野球選手となっても、曙さんへの恩を忘れなかったのだろう。
「イチロー氏は数々の名言を残していますが、その中に『何かをしようとしたとき、失敗を恐れないで、やってください。失敗して負けてしまったら、その理由を考えて反省してください。必ず、将来の役に立つと思います』という言葉があります。失敗しても、反省して明日から頑張ればいい、という曙さんの思いも伝えているのかもしれません」(スポーツ紙記者)
曙さんとイチロー氏には不思議な縁があった。
(石田英明)