東京都が4月11日から行った休業要請。理美容室や艶系サービスはどうなるのか、はたまた保育所はその対象なのかとその議論が分かれたが、医療機関や金融機関、交通機関、官公署はもちろんとして、メディア、葬儀場、質屋などと共に休業要請の対象外として銭湯も含まれた。
「常連さんには風呂なしアパート住まいの若者や下町の築何十年にもなる古い家に住む高齢者などがいます。彼らにとって、ウチはライフラインでもありインフラでもありますからね」
こう話して休業要請から逃れてことでホッと胸を撫でおろすのは都内で銭湯を営む男性だ。
「単身の高齢者のお客さんも多く、入浴中に何か体調に異変があったら一大事ということで、一人で風呂に入るのは怖いといったお客さんもいます」と言うように、風呂なし物件に住む人にとって、銭湯の営業の有無はまさに死活問題でもある。
言うまでもなくもともと苦境が続く銭湯業界では、今回の新型コロナウイルスの感染拡大で臨時休業を強いられたところもある。一方で、いわゆる「3密」を避けるために営業時間を早めて客の込み具合を緩和したり、週末の営業は控えるなど、感染予防対策に努めながら営業継続を行っているところが多い。
東京都温泉組合では利用客に「グループでの利用・大きな声での会話・長時間の滞在・体調が悪い上での利用」の自粛を促し、手洗いの慣行を薦めるが、実際には、
「会話禁止・60分以上の入浴禁止・家で入れる人は家で入浴」
と、より厳しい制限を設けている店舗もある。
また、最近ブームとなっていたサウナについても、一部の銭湯では一時的に「封鎖」する動きも見られている。
そんな緊急時でも、SNSでは困った客の目撃談が報告されていて、「ご年配の方があまりにもコロナを舐めている」、「大学の寮の大浴場が使用禁止になっているせいか、学生がグループで入りに来る」、「サウナに入らせろ!と大声で怒鳴っている客がいた」といった声が上がっている。
熊本のスパ施設では、コロナ感染者の利用が判明すると、館内の消毒作業や従業員のPCR検査などで数日間の臨時休業を強いられた。こうした事例があるにもかかわらず、イタチごっこのようにどうも懲りない客がいるのも現実のようだ。
スパや銭湯に一日の安らぎを求める人は多い。外出がままならない今だからこそ、なおさら温浴施設を求める声がSNSではひっきりなしに上がっている。それならば自らの首を絞めるような利用は控えて欲しいものだ。
(猫間滋)