「ゴーン会見」日本のメディア3社のみが取材を許されたワケ

 全て想定の範囲内――見た者全員がそう思っただろう。1月8日にレバノンの首都ベイルート行われたカルロス・ゴーン被告の会見だ。想定外と言えば、あれだけ想定内のことしか喋らないとは思わなかったことが想定外とも言えるくらい中身は薄かった。
 
 日産立て直しの功績を自画自賛、自身が日産を追われたのはクーデターだと誰もが分かっていることを改めて口にし、問われている容疑への反論のエビデンス提出もない。型通りの検察批判をし、期待させていたクーデターへの政府関係者の関与とその名前は政治的忖度から自主規制するという始末で、なんとも茶番でつまらない内容に終始した。
 
 さてそんな会見だが、約80媒体が入った会見場では海外の主要メディアは取材ができたものの、日本のメディアでは朝日新聞とテレビ東京(ワールドビジネスサテライト)、小学館(週刊ポスト・女性セブン)の3社のみだったことでちょっとした話題になっている。
 
 当の小学館のニュースサイト『NEWSポストセブン』では、同誌記者がなぜ一部のメディアしか呼ばなかったかについて訪ねた際のゴーン被告の回答をこう報じている。
 
「私は日本のメディアを差別しているわけではない。また、日本のメディアだけ締め出したわけでもない」

「正直に言って、プロパガンダを持って発言する人たちは私にとってプラスにならない。また、事実を分析して報じられない人たちは私にとってはプラスにならない」

 プロパガンダ色の薄いNHKが入っていないのが意外ではあるが、3社のうちの1関係者が舞台裏をこう明かす。
 
「保釈されたゴーンは会見で行ったような1人語りの自己主張をしたくてしかたがなかった。そこで昨年末にエージェントを通じて3社が窓口になって取材を行う話でまとまって調整していたんです。また一方で国外逃亡のタイミングを常に窺っていたんでしょうね。日産が探偵を付けていることを告訴して探偵が外されたのを機に一気に逃亡を図った。それでレバノンで会見をするということで、そのままの流れで窓口になっていた3社が取材を許されたということです」

 とはいえ、とりたてて何のネゴシエーションもなかった海外の主要メディアは会見場に入れているわけだから、ゴーン被告が“差別と選別”を行ったのは結果として明らか。海外に高飛びしたのと同様、日本国内での説明と理解など全く念頭にないということなのだろう。

(猫間滋)

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