高齢被害者続出「新型マルチ商法」の闇手口(1)「桜を見る会」を信じて4200万円

 ジャパンライフの元会長が「桜を見る会」への招待状で安倍晋三総理との親密さをアピールし、高齢者を食い物にしていたことが発覚。現役総理が悪徳ビジネスの「広告塔」にされた格好だが、マルチ商法は日に日に進化している。近年、急増中の「モノなしマルチ商法」の闇にうごめく最新手口に迫った。

「桜を見る会」を巡る一連の問題は、鎮火するどころか、なお激しさを増しながら延焼を続けている。

 全国紙政治部記者が語る。

「招待客については〈各界において功績、功労のあった方々〉と指針を示しておきながら前科アリの半グレ集団メンバーや暴力団関係者までも出席していたことが明らかになりました。野党は来年1月の国会でも厳しく追及する構えを見せています」

 中でも最も問題視されたのは、「総理枠」の招待客に、今年4月に特定商取引法違反の疑いで警察の家宅捜索を受けた「ジャパンライフ」(破産手続き中)の山口隆祥元会長が含まれていたことだ。その詐欺まがいのマルチ商法について、社会部記者が解説する。

「80年代に急成長を遂げたマルチ商法の草分け的存在。近年は、顧客に数百万円もする磁気ネックレスやベストを購入させて、別の顧客にレンタルすることで年間6%もの配当を得られる『レンタルオーナー』という触れ込みでビジネスを展開していました」

 銀行の定期預金で金利が0.1%に満たない時代に6%の配当が手に入る─。そんなうまい話があるはずもなく、

「ジャパンライフは17年に約2400億円の負債を抱えて経営破綻しました。契約者は全国に約7000人いて、被害総額は去年の3月末の時点で1800億円と言われています」(社会部記者)

 被害にあった高齢者のケースを紹介しよう。500万円もの大金をはたいて磁気ベルトのオーナーになったものの、月間レンタル料の名目で配当金2万5000円が支払われたのは最初の1年だけ。つまり470万円をドブに捨てたことになる。

 こうした被害拡大に拍車をかけたのが「桜を見る会」だ。ジャパンライフ被害者の70代男性が肩を落として言う。

「商品の説明会では、チラシが配られ、そこには安倍総理から元会長に宛てた『桜を見る会』の招待状が印刷されていた。総理大臣と交友がある人がまさか自分たちをだますなんて考えられなかった」

 悪徳商法を追及してきたジャーナリストの多田文明氏によれば、マルチ商法には、その組織を信頼させるツールがつきものだという。

「かねてから信頼関係を結んでいる知人のつてで顧客をセミナーに誘う。そこで、芸能人や政治家の名前を見れば、どんなに怪しい商材を扱っている会社でも、ついつい信頼してしまう人も出てくるでしょう。総理が顔を出すイベントの招待状となれば、被害者には政府からお墨付きをもらったように映りますよ」

 11月に野党のヒアリングに応じた女性は、先述した「招待状」が決め手となってジャパンライフと契約。結果、4200万円もの被害をこうむった。はからずも「広告塔」となった安倍総理は、マルチ業者元代表との関係について説明責任を果たすべきだろう。

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