どこがアスリートファーストなの? 耳を疑った人が多かったようだ。
12月16日、都内で開かれた日本陸連の理事会。そこでなんと、400メートルリレー代表選手は個人種目を1種目に制限するとの方針が示されたのだ。つまり、陸上界のエースで現在アメリカのフロリダ大学に通うサニブラウン・ハキーム選手は「リレーに出るなら100メートルか200メートルはどちらか1種目に絞れ」ということ。理由は、メダルに近い「男子400メートルリレー」を優先させたいからだ。
だが、サニブラウン選手は常々、100メートルと200メートルの両方でメダル獲得を目指していることを口にしていた。この陸連の強行姿勢にも「自分は、個人両種目でメダルを取るために練習している」「100、200やらせてもらったほうが、リレーに対するモチベーションも上がる。個人種目を頑張った上で、リレーも手を抜かないというスタンスでやりたい」と苦言を呈している。
確かにハードルは高いけれど、本人にとって個人種目のメダルが大目標だ。そのことを応援する人が多いために、日本陸連のメダルありきの方針に《何を言ってるの?》《能力が足りてるのに遠慮しろなんて選手をナメてる》《こんなミソがついたらリレーも危ない》《もし1種目削ってリレーに負けたら誰が責任を取るの?》《テコンドーといい、レスリングといい、陸上といい、自分たちの都合ばかり考えてる人たちばかりが上層部にいるんですね》などと、怒りのコメントが連打されている。
「4人のスケジュールを合わせてアンダーハンドパスの練習時間を取るのが難しいのは理解できますが、そのために陸連が選手に犠牲を強いるのはいかがなものか。米国留学までして頑張っているサニブラウン選手に、いくら日本が4×100の実績があるとはいえ、そのメダルを死守するために“個人種目は1種目だけしか出るな”というのはパワハラにも近い。もしも今回の決定を五輪組織委員会が支持するようなら、二度とアスリートファーストという言葉は使わないほうがいいと思います」(スポーツライター)
救いは、まだ最終決定ではなく、批判だらけになれば撤回も考えられるとのこと。ただ、一度発表してしまった理不尽な種目制限案のせいで、選手たちのモチベーションに影響してしまっては元も子もない。つくづく陸連のお偉方の考えは不可解だ。
(飯野さつき)