6月13日、イスラエルがイランの核関連施設や軍事拠点を対象に大規模な空爆を実施したことで、中東情勢は一気に緊迫の度を増した。イランは即座に報復を宣言し、弾道ミサイルや無人機による反撃を開始。双方の軍事的応酬は収まる気配を見せず、さらなるエスカレーションが懸念されている。
この衝突がもたらす最大のリスクは、ホルムズ海峡の封鎖だ。世界の原油輸送の約2割が通過するこの戦略的要衝が閉鎖されれば、日本経済は壊滅的な打撃を受ける可能性がある。
ホルムズ海峡は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など中東産油国から日本への原油輸送の生命線だ。日本は原油輸入の約90%を中東に依存し、そのほぼ全てがこの海峡を経由する。専門家の間でも、ホルムズ海峡の通行に支障が出れば、エネルギー価格の高騰や供給不足が現実化し、日本のエネルギー安全保障に深刻な影響を及ぼすと警告する。
イランは、過去に何度もホルムズ海峡の封鎖をちらつかせてきた。実際に封鎖が実行されれば、日量2000万バレル以上の原油輸送が停止し、世界のエネルギー市場は大混乱に陥る。日本ではガソリン価格の急騰のみならず、液化天然ガス(LNG)の価格も連動して上昇しているが、電気・ガス料金の高騰は企業活動や家計に直接的な打撃を与え、インフレを加速させるだろう。
日本はオイルショックの教訓から大量の石油備蓄を持つが、長期的な封鎖には耐えられず、物流コストの上昇は食料品や肥料の価格高騰を招き、国民生活は一気に圧迫される。
米国は、トランプ大統領のもとでイスラエル支援を強化しつつ、イランとの核協議を模索するが、両国の対立は収まる気配がない。イランの最高指導者ハメネイ師は「イスラエルは必ず報いを受ける」と報復を宣言し、さらなる攻撃を予告。専門家の間では、米国の介入次第では衝突が地域全体に波及し、全面戦争に発展しかねないとの懸念も根強い。日本が中東依存のエネルギー構造を見直し、米国や他地域からの調達を増やすなどの対策が急務だが、短期的には打つ手が限られる。
ホルムズ海峡封鎖という最悪のシナリオが現実化すれば、日本の経済と生活は未曾有の危機に直面する。エネルギー価格の高騰、物流の混乱、物価の上昇は、企業倒産や失業率の上昇を引き起こし、社会全体に暗い影を落とすだろう。政府と企業は、危機感を持ってエネルギー安全保障の強化に取り組む必要がある。今、行動を起こさなければ、日本は中東の火種に飲み込まれ、取り返しのつかない事態に陥るかもしれない。
(北島豊)