出版社が「売れすぎて怖い」と漏らす「高校生用の学習参考書」はなぜ大ウケしているのか

 高校生の机の棚にひっそりと置かれてホコリをかぶっている…そんなイメージの学習参考書が、いつの間にかSNSを席巻し、《面白過ぎる!》《死ぬほど手に入れたい!》といった熱狂的な声が飛び交っている。出版社が「若干の恐怖を感じる」と漏らすほどの異例のヒットぶりなのだが、高校生だけでなく、大人が絶賛する理由とは…。

 この本は「カラー版新国語便覧」(第一学習社)で、高校国語の必修範囲を古文・現代文・漢文・表現・言葉の5部構成で網羅し、B5判約520ページをオールカラーで展開。文学史の流れを鮮やかな年表で俯瞰したり、評論文の読み方を実例付きで解説したりと、膨大な情報量をビジュアルを通して直感的に理解できるのが最大の特長だ。書店での定価は950円(税別)と、文庫本1冊分より少し高い程度の価格。内容の充実度とコスパの良さも相まって「一生使える参考書」と評され、幅広い世代の支持を集めたようだ。

「人気に拍車をかけたのは、教科書的な堅苦しさをいっさい感じさせない遊び心あふれるレイアウトでしょう。写真や図版、コラム的な読み物的要素が、ゲームや漫画の二次創作を手がけるクリエイター層の創作資料としても注目を集めています。実際、『文豪ストレイドッグス』や『文豪とアルケミスト』『刀剣乱舞』といった作品のファンが、キャラクター設定の裏付け資料として手に取る例も多く、教科書以上の実用性が新たな需要を生んでいます」(ネットライター)

 しかし、爆発的人気のために供給が追いつかず、出版社は5月9日の自社ECでの抽選販売を区切りに店頭流通を一時凍結した。その後、「すべての高校生に届けたい」として増刷体制を急ぎ、学参ドットコムなど、外部委託の通販サイトでも取り扱いを拡大することを決めている。

「その一方で、フリマサイトでは早くも転売が横行しています。メルカリでは2500~5000円、中には『即決7000円』という強気な設定も見られますね。学習参考書がここまで高値で取引されるのは異例の出来事です」(前出・ライター)

 勉強はもちろん、日々の「なぜ」を解き明かす頼れる一冊として、ページをめくるたびに広がる発見を楽しみたい。

(ケン高田)

*写真はイメージ

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