2年半預けて年利1.72%の「社債」と、利息1.25%の「1年定期」どっちがおトク?/佐藤治彦「儲かる“マネー”駆け込み寺」

 3月にある社債が発売されて話題となり、募集金額の100億円は1日ほどで満杯になった。金利が年1.72%と高かったからだ。

 社債のことは、この連載でも何回か紹介したが、銀行預金がお金を銀行に預けるのに対して、社債はお金を特定の会社に預ける。銀行に預ける預金とは異なるので、いわゆる預金保険機構の保証はない。つまり、会社が倒産などした場合は利息どころか、元本も戻ってこないリスクはある。ただしそのぶん、高い利息がつくのが通例だ。

 もう一つ。定期預金は途中でお金を崩すことも可能だけど、社債は途中で現金化しようとすると大損することもある。

 今回の社債の金利は年1.72%と高かったが、期間は2年半とやや長かった。この社債を買ったほうが得かどうかを判断するのに、多くの人が何となく金利が高いからと決めてしまう。

 しかし、銀行からお金を借りることも十分可能な一流企業が、どうして社債を発行してお金を集めるのか。その1つは「これから金利が上がっていきそうだから、金利の低い時に自由に使える資金を確保しておこう」という考えだ。

 では、私たちはどう考えればいいのか。

 今、銀行で年1.72%の金利がつく円預金はない。しかし、これから2年半の間、経済に合わせて日銀が金利を上げていくことはほぼ確実。マーケット関係者は、半年に1度ほど0.25%ずつ金利を上げていくのではないか? と考える向きも多い。

 したがって、一度預けたら1.72%の金利で2年半も固定される社債と、今は1年ものの定期預金にしておいて、金利が上がった1年後、今より高い金利で預け直すのとでは、どちらが得かを考えたというわけ。

 今回下したのは“絶妙”に魅力的という判断。絶妙というのは“ギリギリ”ということ。今、預金保険機構の保証のつく預金で金利の高いものだと、1年定期で1.25%という金利のものがあるからだ。

「何だ、わかりにくいぞ」

 そういう声が聞こえてきたので、わかりやすい方法をお教えしたい。

 まずは、金利を100倍にしてもらいたい。1%を100として計算するのだ。すると1.72%は「172」で、その2.5年分だから「430」になる。ザックリ言うと、100万円を預けたら2年半で4万3000円(税引き前)の利息がもらえるわけだ。

 一方、目先の1年は1.25%の定期預金に預けた場合、最初の1年で「125」の利息がもらえる。「430」から「125」を引けば「305」。つまり、残り1年半で「305」の利息をもらえる金利になっている可能性はあるか? と考える。「305」を1年半でもらうということは1年で「約200」。つまり、1年後に2%の金利がつく可能性は?

 と考えたわけだ。

 市場の大方の予想だと、日銀はこれから1年で2回の金利の引き上げをする。つまり、0.5%は金利が上がる。今の1年ものの定期預金は1.25%だから0.5%上昇して1年後には年1.75%の定期預金が出てくる可能性は十分ある、と予想した。

 さらに、ほんの少し上振れると、2%やそれ以上のものが出てきてもおかしくない、とも考えた。だから“絶妙”なのだ。

 この社債が2年半じゃなくて2年だったり、もう少し金利が高ければ、私も募集に応じていただろう。

 金利が変動する局面では短期の金融商品と、それよりも長い金融商品とでは、どちらが得になるか? を今回ご紹介した方法で冷静に判断してもらいたい。

 もっとも、山ほど預けたい資金があり、絶妙な金利商品が目の前にある場合、その一部を預ける判断をするのも妥当である。近い将来の金利がどうなるのか。自分の見立てが外れる可能性もあるので、分散させて投資するというわけだ。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。最新刊「新NISA 次に買うべき12銘柄といつ売るべきかを教えます!」(扶桑社)発売。

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