バブル崩壊後の失われた30年で、工場撤退などにより企業城下町と呼ばれる地域の灯が消えてしまう例が続出している。アパートやマンションには空き家が目立ちゴーストタウン化しているところもあるが、地方移住を希望する人にとっては魅力的な要素も多いのだという。ナゼか? 2月6日~12日の1週間に配信したAsageiBizの人気記事を再掲載する。(2月6日配信)
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全国各地にある大規模工場は、大量の雇用を生み、多額の税収を自治体にもたらしてくれる存在。当然、工場で働く従業員の多くは現地に住み、飲み食いや買い物などで現地にお金を落とし、地元経済の活性化にも貢献している。
だが、そうした企業城下町がいちばん恐れているのは工場の閉鎖。会社の業績悪化やコスト削減など理由に撤退するケースが相次いでいるからだ。
例えば、大分県東部の国東半島の南側に位置する杵築市には、杵築東芝エレクトロニクスや大分キヤノンマテリアルなど大企業のグループ会社が進出。しかし、東芝は2009年に地元半導体メーカーに施設を譲渡して撤退し、その企業も21年3月に工場を閉鎖。キヤノンも規模縮小で、従業員向けに市内各所に建設されたアパートなどの住宅は空室だらけに。なかには「家賃2000円の物件」もあるとしてネット上で話題となり、一部からは“日本一賃料の安い町”とも呼ばれた。
「2000円というのは、新潟県湯沢町で一時期話題なった10万円で販売していたバブル期のリゾートマンション同様、極端な例ですが、1万円以下で住めるアパートは普通にあります。しかもキヤノンの工場が進出した時期(99年)に建てられているため、そこまでボロボロなわけでもありません」(経済誌記者)
こうしたゴーストタウン化が進む企業城下町には、シャープの拠点工場があった栃木県矢板市や三重県亀山市、日本製鉄の製鉄所があった広島県呉市、新日本製鐵のお膝元として一時代を築いた岩手県釜石市なども有名。いずれもかつての賑わいが嘘のような静けさだが、一方で移住先の候補地としても注目されているとか。
「工場閉鎖からあまり年月が経っていない、もしくは従業員向けに建てられた物件が今も管理されている場合などに限りますが、相場より安い賃料で住めるのでお得です」(同)
大半は単身者向けの建物のため、夫婦や家族での移住には適さないが、移住以外に別荘などセカンドハウスとして使う方法もある。周辺には自然も多いため、たまに来てのんびり過ごすという人でも増えれば、活性化につながるのではいか。
※画像は大分県杵築市