セブンイレブンとイトーヨーカドーが切り離される!?米“モノ言う株主”が分社化を検討要求

 日本を代表する企業の1つである東芝がいわゆるモノ言う株主と対立。創業146年目の昨年11月、とうとう会社を発電所・交通システム・エレベーターなどのインフラ、半導体やHDDのデバイス、キオクシアの株式を管理する東芝へ3分割する案を打ち出し、3月末までに開催される臨時株主総会でその是非が決定される予定だ。東芝としては苦渋の決断の末に打ち出した方針だが、もしかしたらセブン‐イレブンとイトーヨーカ堂などを運営するセブン&アイ・ホールディングスも似たような道を歩むかもしれないという報道がなされた。

「伝えたのはイギリスのフィナンシャル・タイムズです。同紙が1月24日に伝えたところによると、セブン&アイの主要株主の3社が5月か6月に開催される株主総会で会社の分割を求める株主提案を行うべく検討に入ったというのです」(経済ジャーナリスト)

 報道によれば、株主の不満は東芝と同じ。企業価値に見合っただけの株価を押し上げる経営がなされておらず、企業統治に問題があるというものだ。もちろん現経営陣はこういった意見・要求には反発するだろうし、となればやはり東芝と同じく経営陣とモノ言う株主との間での対立が深まって…という、悪夢も想定されないことはない。

 この報道の信ぴょう性が高いのは、やはり過去に投資ファンドが会社分割を要求すべく多くの同社株式を保有してきた経緯があるからだ。昨年5月にはアメリカの投資ファンドのバリューアクト・キャピタルが全株式の約4.3%を保有したが、その際、バリューアクトは投資家向け書簡でセブン&アイの事業の再編やスピンアウト(分割)の利点を指摘していた。今回の報道でも3社のうちの1社として米資産運用会社アルチザン・パートナーズの名前が上げられ、同ファンドはセブン&アイの企業統治に不満があるとされている。

 実はこうした会社分割は1つの流行りでもある。昨年アメリカではGEが航空機エンジン、医療機器、電力に3分割する計画を表し、ジョンソン・エンド・ジョンソンも医薬品・医療機器とコンシューマー部門に分割する計画を表明している。これに東芝も含めて分割する理由は同じだ。

 東芝のような300もの子会社を抱える複合企業は、往々にして各事業を足した企業価値より現実の企業価値が下がるという「コングロマリット・ディスカウント」に陥りがち。だから分割したほうが株主の利益になるというものだ。見方によっては発展的な企業分割だが、悪い見方をすれば“解体ショー”。2015年に不正会計が発覚して経営が迷走、投資ファンドの助力を得てかろうじて上場廃止を逃れてきた東芝にとっては後者がより当てはまるかもしれない。

 ではなぜ今回はセブン&アイなのだろうか。

「昨年10月に同社が行った決算発表では、コロナ前の水準にまで業績が回復して復調が見られましたが、それも20年に買収したアメリカのコンビニチェーンが好調だからで、本体で国内大型店舗のイトーヨーカドーは全体の足を引っ張ったままです。特に衣料品や生活雑貨を扱う部門での地盤沈下に歯止めがかからず、それも今に始まった話ではありません」(同)

 つまりセブン&アイの中でも悪い部門が良い部門の足を引っ張って会社全体の価値を下げている、おそらく投資ファンドはこの辺りに不満があるのだろう。業界1位と言えどもやはりモノ言う株主を相手にしたら厄介な事態になるかもしれない。

(猫間滋)

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