英ファンド「東芝」に買収提案で、「島耕作」はどうなる!? 

 4月7日、英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズが東芝に約2兆円での買収話を持ち掛けたと報道され、周辺ではハチの巣をつついたような騒ぎになっている。

「東芝では2015年に不正会計が発覚して歴代3社長が辞任。16年には06年に6400億円もの巨額で買収したアメリカの原子炉メーカーのウエスチングハウスで巨額損失が見つかり、翌17年には債務超過で東証2部に降格しました。すると1部への再上場を視野に入れていた20年1月に、今度は子会社でまた架空取引による不正会計が発覚。それでも今年1月には1部に復帰するに当たっては、2部から1部への移行基準が緩和されたこともあって、“官製上場”などと揶揄されていました」(経済ジャーナリスト)

 といったように、近年の東芝はまるでどこへ向かうのかわからない糸の切れた凧状態だった。そして今年3月には、エフィッシモ・キャピタル・マネジメントの、所謂「モノ言う株主」が提出した株主提案を飲まざるを得ない事態に追い込まれると、さらに流浪の度を深めていた。

 そこに降って湧いたファンドからの買収提案。まさに日本を代表する企業の1つだった東芝が、外資系企業に様変わりするというのだからその趨勢に耳目が集まらないわけがない。するとツイッターではこんな声も。

「東芝、買収されたら、島耕作どーなるん」「東芝が買収されたら島耕作も最終号迎えるの?」

 こうしたつぶやきが上がるのも、島耕作が勤める「初芝電器産業」(現・テコット)の社名が「東芝」と似ているがために、東芝が初芝のモデルと思われているからなのだが、実はそれは勘違い。島耕作をキチンと読めば、初芝のモデルは東芝ではなく「松下」である(もちろんフィクションなので「たぶん間違い」というのがより正確だが)。

 まずは作者の弘兼憲史氏が松下出身ということ。そして例えば、初芝は創業者である吉原初太郎が町工場から一代で大企業に育て上げたという設定になっていて、それはほぼ松下幸之助氏に重なったり、ライバルでソニーをモデルとしたと思われる「ソラー電機」とはベータとVHSのビデオテープの規格を巡って対立したのも正に松下なら、課長島耕作が買収を担当したアメリカの映画会社の「コスモス」はテーマパークも運営していて、これは松下が実際に買収したユニバーサルスタジオに符合するなど、傍証は枚挙にいとまがない。

 しかもマンガでは競合企業として「東立」という企業も出てきて、これが東芝を指したものなのか日立なのかは不明だが、要は、東芝らしき企業も別に登場しているのだ。だから、仮に東芝がCVCに買収されたとしても、島耕作は続く(おそらく)。

 ちなみに今回の買収劇、作者の弘兼氏は以前にあたかも予見していたかの発言を行っている。前述のように東芝が流浪を続ける2017年に「週刊ポスト」に掲載されたインタビューで、「もし島耕作が東芝の社長になったら」という問いに答えたものなのだが、そこにはこうある。

「島耕作が上場廃止を宣言して、株主には『多大なご迷惑をおかけするが、必ず立て直す』と訴える。それでまた再上場を狙って頑張る」

 CVCの買収が成功したら、東芝は再び上場を廃止して経営を立て直し、企業価値をより高めた上で再上場を狙うことになる。CVCの狙いは、この再上場という出口時点での利ザヤ稼ぎにあるだろうからだ。この予言、当たるか当たらないかは関係各所のせめぎ合い次第だ。

(猫間滋)

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