AI界がひっくり返る中国「ディープシーク」登場に余裕を見せるトランプ大統領の内心

 1月27日のニューヨーク証券取引所は、ダウは上げたがナスダックは前日末から3%の大幅下落だった。中でも半導体やAIといった本来は市場を引っ張るべき銘柄がダウン。とりわけその代表格のエヌビディアが17%下げて、一時日本円で約91兆円もの時価総額が吹っ飛ぶという事態となった。

 その原因は中国スタートアップの「ディープシーク」なる会社が低コストでの生成AIの開発に成功し、そのチャットボット・アプリのリリースが引き金といい、世界中の市場関係者の間で騒然となった。なにしろ日本株もその煽りを食らい続落となったほどだ。

「伝えられているところによれば、なんでもディープシークの生成AIはChatGPTo1に遜色のない性能で、開発に要した金額は9億円ほどだそうです。ChatGPTo1では140億かかったとされていますからね。いわゆるGAFA系企業が生成AIの開発に巨費を投じてきたのは周知のところですが、ディープシークの登場は、それらの苦労を全てひっくり返してしまうかもしれない。だから市場は衝撃をもって受け止めたのです」(経済ジャーナリスト)

 ディープシークは中国の名門大学でコンピュータ工学を学んだリャン・ウェンフェンという人物により、23年に設立されたばかりの企業だ。エヌビディアのジェンスン・ファンは急速に世界のビジネス・シーンを席巻した人だが、このリャン・ウェンフェンも同じような存在になるか。

 このディープシークについては、トランプ米大統領も言及、「米国にとって警鐘になる」と肯定的な受け止め方をしている。

「果たしてどこまで本心なのか。中国の半導体分野の進歩を抑制しようと、アメリカはファーウェイを追い出し規制をかけてきましたが、23年には自社製チップ搭載のスマホが発売されたことで、規制の網にも限界があったことを思い知らされていますからね。中国は昨年に月の裏側にも到達し、先端テクノロジーですでにアメリカより先を行っている分野もある。トランプは単に余裕を装っているだけとの見方もあります」(同)

 まだ全容の知れないディープシークは、米中先端技術対決のゲームチェンジャーとなるか。

(猫間滋)

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