ドラマ「翔んだカップル」の初代マドンナだった桂木文(64)の胸のポッチが見られた「サワーロイヤル」(近畿コカ・コーラボトリング、82年)も印象深い。
芝生の生えた広い庭で縄跳びをしているわけでもなく、なぜか元気いっぱいの笑顔でジャンプしている桂木文。顔から胸にかけてホースで水をかけられ胸の部分がびしょ濡れになり、胸の先端が鮮明に。すると「おっ、パイン娘」なるナレーションが入るのだ。
「このCMに関しては『おっ、パイン娘』というダジャレを言いたかっただけのような気がします(笑)」(石原氏)
こういったお色気CMは令和では皆無に。「性の商品化」は女性を侮辱するとの観点から抗議が来ることをクライアントは恐れているのだろう。
「マジックのプロッキー(87年)で浅野ゆう子(64)のハイレグが眩しいね。あの頃はキャンペーンガール全員ハイレグだったんだから。高島礼子(60)も飯島直子(56)も。あの蓮舫(57)でさえね。『性の商品化』なんていつから言われるようになったのかね」(マグナム氏)
「性の商品化」やルッキズムを突かれることを恐れた企業は、自社のキャンぺーンガールを決定するミスコンなど女性の美を競うイベントを次々と廃止する。その結果、バブル時代に繁栄を極め、幾多のスターを生み出したレースクイーンも今や絶滅危惧種になっている。
84年、ビートたけし(77)出演の歯磨き粉の「デミュートサンスター」。司会者に扮したたけしが板橋区の鈴木さん(ラッシャー板前)にいつもの歯磨き粉と新商品(デミュートサンスター)を選択させる。
いつもの歯磨き粉を掴もうとする鈴木さん。その瞬間、たけしに頭をひっぱたかれた鈴木さんは思わず新商品を選ぶのだ。また、後ろの黒子(井手らっきょ)が強引に鈴木さんに新商品を選ばせるバージョンもあった。
「CMというものは宣伝した商品をとにかく売りたい、消費者の本音なんかどうでもいい、消費者の本音よりもスポンサーの都合でCMの中の世界が成り立っていることと、CMというウソ臭さを見事に表している。たけしさんとラッシャーさんという組み合わせもいい。元々ラッシャーさんはたけしさんに逆らえないことをみんな知ってるわけだし」(石原氏)
漫才とはいえ、頭を平手でひっぱたくことについて、クレームが来るのは時間の問題か。マグナム氏は言う。
「錦鯉のネタ見て『子供がマネするから頭叩くのよくない』とか言うバカいるもん。マネして頭叩いたら『そんなことマネするんじゃない』というのが親の務め。くだらない正義感だよね。今の時代、正司敏江・玲児の“夫婦どつき漫才”は『ダンナによる嫁へのDV』ってことになってしまうのかな」
嗚呼、抱腹絶倒の昭和の芸は遠くなりにけり~。
(つづく)