「巨額詐欺男」がハマった「オンナとカネ」無間地獄(2)外資系証券会社の奔放「女体盛りを初体験」

 前述のように齋藤氏は、もともと会社員だった。大学卒業後に入社した山一證券で、97年の自主廃業に直面。その後、金融業界を転々としながら、外資系証券会社のメリルリンチにたどり着く。そこで、能力を発揮して実績が認められ「年俸1億円」まで上り詰めたところで、金の魔力にやられてしまう。

「メリルリンチの誰でもが1億円をもらえるわけじゃない。そんな選民意識があって、手元にはなかなか使いきれないだけの金がある。そうなると、恥ずかしながら、金に負けてしまう自分がいたんですね。実際、外資系証券マンをやっていると、目の前でハンパない金額が飛び交い、金銭感覚がマヒする一方で、それなりにストレスも抱えていました。終業後や休暇に何をするか、それぐらいしか楽しみがないわけです」

 そんな齋藤氏が余剰資金を享楽に回すのは、時間の問題だった。そのくらい当時の外資系証券マンの遊びは派手だったのだ。

「本でも書いたように、学生時代に風俗店で初体験をしたクチで、もともと女に関しては地味な方でした。でも、当時の上司が銀座のクラブで領収書も受け取らずに、支払いを済ます姿はカッコよく見えたものです。その上司が、私も含めた社内のデキるヤツを20人ほど佃島の料亭に集めたことがありました。薄暗い部屋に案内されると、そこには女性が2人、横たわっていて、体の上に刺身が盛られていたのです。『これが、女体盛りか』と驚きつつも、豪快な上司に私も認められたような気分になって、うれしくなったのを覚えています。とはいえ、積極的に女体盛りは楽しめなかった。普段は仕事一筋というようなマジメな同僚が、薄暗くてハッキリと見えない女性の秘所を、ガラケーのライトを照らして懸命にのぞいている姿があって、人間の二面性を垣間見たせいかもしれません」

 こんな社内風土に齋藤氏も染まっていく。それまで勤めてきた日本企業では女性社員は制服姿だったが、外資系では服装が自由。ノースリーブなど露出の激しいファッションでもお構いなしの女性も多かった。

「開放的な雰囲気のせいなのか、みずから『今夜は帰らないつもりで来ました』なんていう女性もいて、一晩だけも含めれば、3年ほど在籍したメリルリンチ社内で6人の女性と関係を持ちました。もちろん、結婚をしていたから不倫ということになります。でも、目黒の高級住宅地に一軒家を構え、妻には人並み以上の生活費も渡していた。関係を持った女性たちともキレイに付き合ったので、誰にも迷惑をかけてなかったと思っています」

 すっかり不倫に抵抗がなくなった齋藤氏は、遂に高級娼婦の世界へと足を踏み入れていくのだった。

齋藤栄功(さいとう・しげのり)1962年、長野県生まれ。86年に中央大学法学部を卒業後、山一證券に入社。同社の自主廃業後に信用組合、外資系証券会社を経て、医療経営コンサル会社「アスクレピオス」を創業する。08年に詐欺とインサイダー取引容疑で逮捕され、その後に懲役15年の判決を受けて長野刑務所に服役。22年に仮釈放された。

(つづく)

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