サッカー元イングランド代表監督のスヴェンゴラン・エリクソンさんが亡くなったのは8月26日のことだった。享年76歳。今年1月には膵臓がんであることを公表し、その内容は「余命1年。手術は不可能」という衝撃的なものだった。
エリクソンさんはスウェーデン人としてイタリアリーグのローマやサンプドリアなどで指揮した後、2001年にイングランド代表監督に就任。同国初の外国人監督として、02、06年W杯では当時全盛期だったデビット・ベッカムを主将とした代表チームを編成したが、ともにベスト8で終わっている。
日本代表はこの間、2004年6月1日にマンチェスターでイングランド代表と親善試合を行っている。監督はジーコ。試合では当時エースだった中田英寿が足の付け根痛で招集されなかったが、中村俊輔、小野伸二、稲本潤一とタレント揃いの中盤で挑んだ。やられ放題だった前半の一方で後半8分、日本が4本のパスを繋いで最後は小野のゴールで追いついた試合だ。当時の日本代表チーム関係者はこう振り返る。
「結果は1-1の引き分け。エリクソン監督は試合後、『日本が勝ってもおかしくない展開だった』とコメントしていました。そして日本側のロッカーをわざわざ訪れ、ジーコ監督にこう話していましたよ。『いいチームを作りましたね。06年のW杯が楽しみです』と」
そこでエリクソンさんが、いの一番にベタ褒めしていたのがFW久保竜彦だったという。
「この試合では後半に途中交代していたのですが、それでホッとしたとまで語っていました。なぜ欧州でプレーしないのか意味がわからない、すごいストライカーだ、私に紹介してくれないか?と、スカウトする勢いでしたから」(前出・関係者)
エリクソンさんは、サッカーとはゴールを奪って勝つスポーツだということしっかり教えてくれた「名将」だった。
(小田龍司)