今の季節、各地で催されている怪談や肝試しイベント。特に肝試しに関しては全国各地で心霊スポットと呼ばれる場所があり、若い頃に仲間たちと深夜に訪れたなんて思い出がある人も多いだろう。ちなみに「心霊スポット」と聞くと人気のない廃墟などを連想する人もいると思うが、なかには昼間は観光名所という場所も少なくない。
三途の川などの荒涼とした風景が広がる「恐山」(青森県)、断崖絶壁の景勝地でサスペンスドラマのロケ地としてもたびたび登場する「東尋坊」(福井県)や「三段壁」(和歌山県)はあまりに有名。前者は古くから信仰の対象となる霊場、後者は身投げスポットであることが大きな理由だ。
また、4月に殺人事件殺現場にもなってしまった「神居古潭」(北海道)は、アイヌ民族の聖域にもなっている渓流沿いの景勝地。実写映画が大ヒットした漫画「ゴールデンカムイ」の舞台のひとつで、聖地巡りをするファンが訪れる人気観光スポットだが、ここも地元では心霊スポットとして認知されている。
他にも都心のオフィス街の一角にあり、ビル建設などで撤去しようとすると工事関係者に災いが襲い掛かったという「将門の首塚」(東京都)、一説には10万人以上が亡くなったともされる「鈴ヶ森刑場跡」(東京都)などの史跡も東京を代表する心霊スポット。この手のエピソードには事欠かない。
「廃墟巡霊」(ミリオン出版)の著書でこれまで全国数百カ所の心霊スポットを取材したライターの高島昌俊氏は、「怪奇現象の有無に関係なく、心霊スポット化する観光名所の多くは伝承レベルを含めて過去に人が亡くなった場所です」と共通点を明かす。
つまり、それで言うと史跡はほとんどの場所が当てはまることになる。
「あと、深夜の立ち入りが制限されていないことも特徴のひとつ。肝試しで訪れやすいため、体験談などが拡散しやすいんです」(同)
京都や鎌倉などの古都にはこうした場所が数多く存在するという。
「鎌倉の祇園山の麓にある『腹切りやぐら』は鎌倉北条氏の終焉の地として知られていますが、そこで起こった出来事や名称のインパクトもあって心霊スポットとしてもマニアの間では人気。入口には《霊処浄域につき参拝以外立入禁》との立て札もあります」(同)
これまで旅行などで訪れた観光名所の中には、気づいていないだけで心霊スポットだった場所もあったのかも。
※写真は鎌倉の「腹切りやぐら」