かつてはコンスタントに放送され、高視聴率をとっていた心霊番組。だが、最近ではすっかり鳴りを潜めた。その理由について、以前、心霊番組の製作に携わっていた民放のディレクターはこう語る。
「当時の心霊番組は演出という名目のもとで仕込みやヤラセなどが当たり前に行われていたため、面白かった半面、トラブルも絶えなかった。ところが、コンプライアンスが厳守される世の中になり、過剰な演出が出来なくなった結果、怖さも半減、視聴者離れが始まり、心霊を売りにする番組は成立しなくなってしまったんです」
だが、心霊や都市伝説、陰謀論など、目に見えない怖さを求めるニーズがなくなったわけではなく、それらのファンが流れたのが、昨今急増中の「心霊系YouTube」だとされる。
「このテのチャンネルは、ホラーエンターテインメント番組とよばれ、日本全国の心霊スポットや恐怖ゾーン、廃墟をロケしたり、いわくつきの事故物件に住んだりと内容も様々。ただ、現在人気の『ゾゾゾ』をはじめ、『STスタジオ』『だいにぐるーぷ』等のチャンネルは、演出に頼らずにその恐ろしい雰囲気を画面越しに伝えることに徹しているため、テレビ番組では味わえないリアリティーがあり、特に『ゾゾゾ』などは動画の平均再生数が100万回超えと言われる超人気チャンネルとして認知されています」(前出・ディレクター)
とはいえ、心霊スポットには、訪問者に不幸をもたらすという不吉な噂がつきもの。心霊ユーチューバーはそうしたリスクを背負って、心霊スポットに足を運んでいるわけだが、それでも「ここだけはパスしたい」と人気ユーチューバーでも尻込みする最恐スポットが存在するのだとか。それが、岩手県にある「慰霊の森」なのだという。
「ここは、1971年7月30日にANAの旅客機と航空自衛隊の戦闘機が衝突、空中分解して旅客機に搭乗していた乗組員162名が全員亡くなった場所なんです。その後、墜落したあたりの跡地が整備され『慰霊の森』と名付けられ、昨年5月には航空安全祈願を込めて『森のしずく公園』という名称へ変更されました。地元では肝試しで入った若者が白髪の遺体となって発見されたという都市伝説もささやかれています。こうした噂を聞きつけて訪問したユーチューバーの中には精神状態が不安定になり、入院したという人もいるのだとか。そのため、百戦錬磨の心霊系ユーチューバーでさえ、この場所にだけは面白半分で行ったらヤバいと……。ま、触らぬ神に祟りなしといったところでしょうね」(前出・ディレクター)
再生数を稼ぎに足を踏み入れたものの、その独特の空気に耐えきれず、途中で逃げ出すという動画も目につく。信じるか信じないかは視聴者次第だが、パトカー出動騒ぎなども報告されているので、ユーチューバーでなくても訪問は控えたほうがよさそうだ。
(灯倫太郎)
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