西アフリカで若者を破滅に導く“人骨麻薬”が日本に上陸する日

 西アフリカ西部に位置する人口800万人の国、シエラレオネ共和国(通称シエラレオネ)が、ある合成麻薬を巡って揺れに揺れている。

 同国で「KUSH(クシュ)」と呼ばれる激ヤバな合成麻薬が若者たちの間に蔓延し、年間数百人が死者が出ている、と英BBCが伝えたのは8月5日のこと。報道によれば、この麻薬は原料に何と「人骨」が使用されているといわれ、首都のフリータウン周辺にある共同墓地では連日のように「墓荒らし」被害が続出。警察が夜間の警備取り締まりに追われているというのだ。

 南米の麻薬に詳しいジャーナリストによれば、クシュの主な成分はフェンタニルとトラマドールで、それに遺体防腐処理に使うホルマリンが含まれているとされるが、「正直、人の骨が原料に含まれているかについては明確にされておらず、謎のまま」という。

「クシュがフリータウン周辺で流行し始めたのは、今から6年ほど前だと聞いています。使用すると首や関節の痛みをはじめとした様々な健康被害が現れ、さらには重大な自傷行為を引き起こす可能性がある、との指摘もあります。ただ、30円程度で購入できるとあって、若者を中心にあっと言う間に蔓延。今では街のあちこちに依存症患者が続出している状況のようです」(同)

 地元警察の捜査によれば、クシュの生産拠点は国内外にあるものの、その多くが海外から輸入された原材料をもとにシエラレオネ国内で生産。バイヤーが流通しているといわれる。

「シエラレオネは貧富の差が激しく、さらに新型コロナウイルスの影響で若者たちの失業率が一気に上がったことも、クシュが蔓延した原因だとされます」(同)

 フリータウンのスラム街には、なけなしの給料をすべてクシュに費やし、身体がぼろぼろになってもその快楽から抜け切れず、売春や犯罪行為を行うことで薬を手に入れる若者も急増。同国のジュリウス・マーダ・ビオ大統領はクシュを「死の罠」と呼び、『階級、民族、性別、宗教の境界を知らない恐ろしいクシュは、私たちのコミュニティに壊滅的な被害を与え、家族を引き裂き、私たちの将来の指導者を奪っている』として、今年4月には国家非常事態宣言を発令。当局も売人や薬物使用者の取り締まりを強化しているものの、一日厳しい仕事をして数百円稼ぐのなら30円で現実から逃避したいと考える若者が後を絶たない状況だという。

 そして発信元は不明だが、「クシュには人骨の成分が使われている」との噂が広まったことで、違法な墓荒らしも増え、警察が対応に追われる騒ぎになっているというのである。

 BBCの報道によれば、フリータウンの医療施設にはクシュの常用により手足が腫れ上がり、臓器不全や精神疾患を引き起こした患者が続々と訪れており、「最近数カ月間で、フリータウンだけで数百人の若い男性がKUSHによる臓器不全で死亡している」という医師のコメントを紹介。病院で死に至る患者も日を追うごとに増えている、と伝えている。

 前出のジャーナリストが続ける。

「現在、日本でも『クシュ』という名の危険ドラッグが出回っていますが、こちらは大麻の一種で人骨は含まれていないようです。ただしネット社会の現代。すでに欧米のブラックマーケットでは、当たり前のように問題となっているクシュが販売されていることを考えると、日本に上陸するのは時間の問題。いや、もう入ってきている可能性も考えられます。そうした意味では、西アフリカであろうが欧州のどこの国であろうが、手に入れる気があれば手に入れられる時代になったということ。この麻薬に人骨が含まれていようがいまいが、激ヤバであることはシエラレオネで証明済みで、これを使い続ければ間違いなく命を落とします。なので、間違っても面白半分に手を出さないこと。それだけは胆に銘じるべきです」

 君子危うきには近寄らず。一時の快楽が死を招くこと十分あり得ることを忘れてはならない。

(灯倫太郎)

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