10月1日から消費税率が8%から10%に増税されたのに合わせ、日本放送協会(NHK)では放送受信料の値下げを実施した。NHKでは「消費税増税にともなう料額改定はいたしません」と説明。受信料は税込の総額で案内されるため、料金据え置きは実質的な値下げにあたる。
今回の受信料据え置きは、昨年に「消費税の増税分はNHKが肩代わりし、受信料を据え置く」という旨を明らかにしていた件が実施されたもの。そのため有言実行として評価されているが、今回の発表内容に疑問を呈する向きもあるという。テレビ誌ライターが指摘する。
「値下げ自体はいいことですが、気になるのはNHK側の説明です。NHK公式サイトの“受信料の窓口”に掲載された“受信料の「実質値下げ」について”というページには、『2019年10月からの受信料は、実質2%の値下げとなります』と説明されています。しかし実際の値下げ額を計算してみると、契約形態や切り上げ下げの違いにもよりますが、1.76〜1.86%程度。この数字はNHKが主張する2%とは差異があり、『実質2%』と言い張るのは無理があるでしょう。公共放送というNHKの立ち位置を鑑みれば、不当表示と指摘されても不思議ではありません」
それではなぜ、このような数字の差異が出てくるのか。その原因は「値下げのレトリック」にあるという。
「NHKの計算は次のように説明できます。現在の受信料(税抜)を『1』とした場合、消費税込の支払総額は『1.08』です。それが増税後には『1.10』になるはずのところ、料金据え置きにより『1.10−1.08=0.02』が割引額となるので、2%の値下げという理屈です。しかしこの計算は、机上の計算に過ぎません」(前出・テレビ誌ライター)
契約者にとっての受信料はあくまで、支払総額のこと。NHKでは受信料の本体価格(税抜価格)を明示していないこともあり、税抜価格を論拠とする「2%の値下げ」は詭弁だというのだ。
「契約者にとってベースの数字は税抜価格の『1』ではなく、あくまで現在の支払額である『1.08』です。それが増税により『1.10』に増えた場合の増額分は、NHKが主張する2%ではなく、約1.85%となります。それゆえ今回の料金据え置きは1.85%の値下げと表示してしかるべきで、“実質2%”というNHKの言い分を不当と感じる人がいるのも当然でしょう」(前出・テレビ誌ライター)
NHKの理屈と同様のレトリックは、じつは様々な業界で料金据え置きアピールの時に使われている。もちろん、増税分を上乗せしない姿勢は庶民にとってありがたいことだが。