6月27日のトランプ氏とのテレビ討論会で精彩を欠いた答弁を続け、事実上「大敗北」を喫したバイデン大統領。民主党議員や資金提供者からも選挙戦を撤退すべきとの声が相次ぐ中、討論会当日は風邪や疲労で「ひどい気分だった」と釈明。ここ数日は信頼回復のため積極的にメディアのインタビューを受けるなどして、健康アピールに必死のようだ。
「討論会翌日からの元気そうな姿を見るうえでは、認知能力が完全に落ちているとは思えないものの、G7サミット等での誤認発言や時折見せる精彩を欠くような、いわゆる浮き沈みは、残念ながら老いの影響と指摘されても仕方がない」(国際部記者)
そんな健康状態で、はたして責任ある仕事を長時間続けることが出来るのか。本人は討論後、キャンプ・デービッドで、ジル夫人や子供、孫らと過ごした際、親族からも大統領選継続を促されたとして、直近のインタビューでは「全能の神が降臨して、ジョー、選挙から降りろ!と言ったら私は降りる。しかし、全能の神は降りてきていない」と選挙戦継続の強い意志を繰り返し述べている。
「ただ報道によれば、5日の時点でホワイトハウスには、民主党の主要献金者である経営者らのグループ168人が署名したバイデン氏撤退を求める書簡も届いたそうですからね。民主党内での混乱は日を追うごとに大きくなっています」(同)
身内からも撤退論が相次ぐ中、バイデン氏の口から、またもやとんでもない失言が飛び出したのは、フィラデルフィアのラジオ局「ウルド」で5日に行われたインタビューだった。今回の選挙は有権者である黒人層の投票がカギを握ると言われていることから、初の黒人大統領に就任したオバマ氏を引き合いに出したバイデン氏は、「ところで先ほども言ったように、私は黒人大統領とともに働く初の副大統領であり、初の黒人女性であることを誇りに思う」と、突然、意味不明な言葉を放ち、スタジオを凍りつかせたというのだ。
「バイデン氏は2009年から8年間にわたってオバマ氏の副大統領を務めていたこともあり、自身が大統領就任後には自身の選挙運動でもナンバー2として大きく貢献してきたカマラ・ハリス氏を初の黒人女性副大統領に起用したという経緯がある。おそらく、番組でバイデン氏はハリス氏の功績を述べようとしたのでしょうが、どうしたわけか自分とハリス氏とを混同。この大失言の結果、それまであちこちで挽回のインタビューに応じてきた苦労が水の泡となってしまいました」(同)
しかも、同日にはウィスコンシン州の集会でも、「可能な限りはっきりと言っておきたい。私はこのレースを続ける。私はドナルド・トランプ氏を倒す。2020年にも再び倒す」と選挙戦撤退を完全否定しつつ、またも年代を間違えてしまったバイデン氏だけに、この「ハリス氏混同」発言で文字通り火に油を注ぐことに。
9日からはワシントンで開催されるNATO首脳会議に出席する予定のバイデン氏だが、はたして記者会見では、どんな発言が飛び出すのか。NATOのストルテンベルグ事務総長はいまのところ「内政に関与せず」との立場を崩していないものの、米国がNATO最大の核保有国である以上、バイデン氏の職務遂行能力はNATOにとっても最重要課題であることは間違いない。継続か撤退か…その行方を世界が注視している。
(灯倫太郎)