米国防総省が昨年決定していた在日米軍の機能強化を、トランプ政権が取りやめる案を検討していると複数の米メディアが報じたことで、日米の防衛・軍担当者に衝撃が走っている。霞が関関係者が明かす。
「トランプ政権は財政再建の一環として、イーロン・マスク主導で連邦政府や各省庁に対して大幅な予算削減を迫っている。その流れで国防総省が作成した資料に、在日米軍の機能強化を取りやめれば11億ドル(約1600億円)が削減できるという案が含まれているというのです」
しかし、これが本当なら東アジアにおけるアメリカの軍事力は相対的に低下し、反対に中国や北朝鮮、ロシアなどの存在感が増すだろう。何より、アメリカの協力で成り立っている日本の防衛力が大きく後退する可能性が高まり、ジャパン危機となる。
そもそも在日米軍機能強化案は、昨年、バイデン政権下で開かれた日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で米側から提示された案だ。防衛省関係者が言う。
「在日米軍司令部は現在、基地管理のみに権限が限られている。部隊指揮や自衛隊との調整は米ハワイのインド太平洋軍司令部が担っている。しかし日本とハワイでは時差や距離がありすぎて非常時にはスピーディーな意思決定が難しい。このためアメリカは、新たに在日米軍の中に指揮権限を持つ統合軍司令部を設け、自衛隊との連携を円滑にしたいとした。横田基地にあった在日米軍司令部も日本の防衛省に近い六本木に移動させる案まで浮上していたのです」
国内のシンクタンク関係者は今回の報道を受けて、こう推測する。
「トランプ氏はとにかくバイデン政権で決めたことはやりたくない。だから在日米軍の機能強化も一度ご破算にして、改めてトランプ流を考えるつもりなのでは。そのヒントは、先日トランプ氏が日米安保関係について『日本はアメリカを守らない』と不満を漏らしたこと。要は日本がアメリカに護って欲しければもっと金を出せというシグナルだ」
その上で、シンクタンク関係者は在日米軍機能強化資金1600億円の肩代わりを日本に求めてくる可能性も否定できないとする。
もちろん、アメリカがさらなる防衛費の増額要求を突きつけてくる可能性も高い。トランプ政権の国防次官・コルビー氏は、日本はGDP比3%を防衛費に充てるべきと発言している。3%はGDPを610兆円とすれば約18.3兆円だ。現在日本の防衛費が8兆9000億円、GDP比で1.6%だから、その額の大きさがわかるというもの。
そんな中、3月30日には中谷防衛大臣とヘグセス米国防長官が会談を行う予定。そこでどんな会話が交わされるか、注目だ。
(田村建光)