豚肉の価格が急騰している。これにより大きな打撃を受けているのがラーメン店だ。2023年度には倒産件数が過去最多を記録するなどラーメン業界は厳しい状況にあるが、さらに「豚肉ショック」の到来により、単価が1000円を超えると客足が鈍るとされる「1000円の壁」を超えられないラーメン店が壊滅する危機に晒されているという。
「ここにきて豚肉の仕入れ価格は3割~4割ほど上昇しています。原因は主に、原油高による輸送コスト増からの豚のエサ代高騰。長期的に見れば飼料の国産化が望ましいのですが、日本にはそれだけの土地がない。こうなると今後は牛や鶏にも影響が出そうですが、まず豚肉に早くも影響が出ているということです」(経済ライター)
豚肉ショックは家計にダメージを与えているが、絶体絶命のピンチとなっているのがラーメン店だ。チャーシューだけでなく、スープに豚ガラを使っているところも多く、仕入れ値の高騰により材料費が大きく上昇している店も少なくない。ラーメン店は小麦の高騰に加えエネルギー費や人件費の上昇、さらには新札の流通による券売機の買い替えなど負担が増えており、東京商工リサーチによると23年度のラーメン店の倒産は63件(前年度比2.7倍)まで増加して過去最多を更新している。
「急激な高騰の豚肉ショックは少なくとも夏までは続く見込みなので、1000円の壁を超えられないラーメン店は非常に苦しい経営状況にならざるを得ない。そうした意味で“壁”は完全に崩壊する時期が来ているのかもしれません。ただ、単純に1000円超に値上げすればいいのかといえば、しっかりと実力があってファンがついている店でないと厳しい。豚肉の高騰で値上げしたことで客離れまで起きてしまったら、とても営業は続けられませんからね」(ラーメン評論家)
客側にとっても、「ラーメンは安い」という感覚は完全に捨てなければならない時代がやってきた。
(小林洋三)