物価上昇のアメリカでなぜかマクドナルドが激安「5ドルセット」を投入した値引き商戦勃発の事情

 習近平国家主席の中国では、「共同富裕」のスローガンで格差のない社会を謳ってはいるが、実際には格差社会は深刻化し、巷では「朝食3元(約60円)」の激安メニューが人気で、「貧乏人セット」などと呼ばれている。これと事情は全く異なるが、物価上昇が激しいアメリカでは、マクドナルドなどの大手飲食チェーンで「激安セット」販売の動きが広がりつつあるという。

「米マクドナルドがこのほど『5ドルのハッピーセット』の販売を打ち出しました。5ドルといえば日本円では約800円で、日本のセット・メニューの値段とそれほど大きな違いはない安さ。やはりアメリカでは、ウェンディーズも5月に、3ドルの朝食セットの販売を開始しています」(経済ジャーナリスト)

 日本のシンクタンクが報告しているところによれば、アメリカの物価は日本の1.5倍という数字がある。通常ハンバーガーのセット・メニューが1500円ほどであることを考えても、「5 ドルメニュー」がいかに安いかが分かる。

 そのアメリカでなぜ値引きの動きがファーストフード・チェーンに広がりつつあるかといえば、チェーン店のメニューが物価高の象徴とみなされ、客離れが進んでいるからなのだという。

 そんな中での値引きは大いにけっこうで庶民としては嬉しいところだが、事情はそうも簡単ではないのだとか。

「日本もかつては牛丼各社が激しい値引き競争を繰り広げ、結果、各社を疲弊させたことがありました。日本はデフレ社会が続いたことから実現した競争でしたが、国全体で見れば、そのことがデフレ社会からの脱出を遅らせた。アメリカの現在の物価高と値引きの動きは、そんな日本との状況とは全く異なりますが、例えばマクドナルドがこうした値引きをすれば、各社も対応しないと負けてしまうため、企業体力的には業界トータルでマイナスになる可能性がある。また5ドルセット以外のメニューが売れなくなって、自分の首を絞めることになるという弊害も考えられます」(同)

 日本のマクドナルドは、この2年間で5回の値上げをし適正価格に近づけているとされるが、それでもやはり庶民には厳しく、アメリカの動きが羨ましく思えてならない。

(猫間滋)

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