3期目を目指して東京都知事選への立候補を表明した小池百合子都知事。一方、昨年4月に2期目がスタートした大阪の吉村洋文府知事。東西を代表する立場ではあるが、権力や権限は月とスッポンだった。予算や給料、職員の数など、様々な視点から都知事と府知事を徹底比較する!
東はいよいよ東京都知事選挙が6月20日に告示され、期日前投票も始まって本格スタート。西は万博の開幕が来年4月13日に迫るが、準備の遅れから「果たして開催に間に合うのか」といった心配の声ばかりが聞こえてくる。何かと注目される小池百合子東京都知事(71)と吉村洋文大阪府知事(49)だが、このところ、両者の顔をメディアで見ない日はないほどだ。
社会部記者が解説する。
「かつて吉村知事がバラエティー番組で明かしていたのは、小池知事が大阪城公園を訪問した時のこと。そのSPの車列が大臣クラス以上だったと、半ば恨み節をこぼしていた。その後も、『国レベルの予算使えますしねえ』と、半ば諦め気味に都知事との権力者格差を挙げていた。今や経済的にもインバウンド頼みの大阪との差は歴然。このまま万博のお粗末さが露呈すれば、府知事の人気低下にもつながりかねません」
じゃあ、東と西を代表するこの両知事、何がどう違い、どちらにどれだけの力があるのだろうか。意外に知られていない両者の実力比較について、都庁勤務歴もあり、大阪府と大阪市の特別顧問を務める行政学者の佐々木信夫中央大学名誉教授は、こう解説する。
「マスコミでは東京都知事選を『首都決戦』と呼び、実際、石原慎太郎(享年89)都知事時代は、新規職員の募集で『首都公務員』という表現を使っていたので、その意味では確かに東京都知事は知事の中でも別格かもしれません。しかし実態はともかく、法的には東京都知事も他の知事と同列です。違いがあるとすれば、都政の規模や首都に置かれている自治体というポジションによる違いによります」
そこで「規模」の違いを見ると、人口は東京都の約1400万人に対して、大阪府は約880万人。予算が約8兆4500億円に対し、3兆1900億円。都府内の総生産(GDP)は約113兆円に対して約41兆3200億円と、規模がまるで違う。
佐々木氏によれば、東京都の人口は一般の県の10倍以上、年間予算はオーストリア、GDPはオランダに匹敵するというから、もはや普通の国家並みだ。
「都知事は首相より強い権力を持つ」とよく言われるが、この点についても佐々木氏の解説を聞こう。
「その根拠として(1)首相は国会議員という少数者に選ばれるが、都知事は1000万の有権者から選ばれる。(2)予算規模と同様に都庁の規模も大きく、17万人の職員を抱え、そのトップに立つ都知事の裁量権は大きい。(3)閣僚の全員一致を原則とする合議制内閣の首相に比べ、都知事は1人で意思決定できる独任制を持つ。(4)首相や大臣、党首と同じ要人扱いされ、SP(要人警護)が2名つく。といった点が挙げられるでしょう」
数字の比較なら、大阪府の職員数は約4万3000人と東京都の約4分の1だし、要人扱いでは、石原都知事が10年5月に訪韓した際には、日本のSP以外にも韓国の警察官10人が警護に当たり、国賓級の扱いだった。
ちなみに両者の給料は、小池都知事が1278万円で、吉村知事は1558万円。小池都知事の方が安いのは16年から条例で給料を半額にしているからで、このあたりは格上の余裕といったところか。
以上を踏まえて、佐々木氏はこう指摘する。
「ですが繰り返せば、法的には同格で、そこに違いはありません。それでも都知事が特別とされるのは“見えない権力”があるからです。金融市場はニューヨーク、ロンドンなどと並び、東京市場が世界に大きく影響している。国内的にも政治、行政、経済、情報、文化が一極集中して、GDPの約2割、国税収入の約4割、株式売上高の約9割を占めます」
見れば見るほど、両者の権力・権限の違いは月とスッポン。その裏から、吉村知事の恨み節さえ聞こえてきそうな塩梅なのだ。
(つづく)