モンゴル出身力士「日本人になる人、ならない人」の勝ち負け

 一部の競技を除けば、選手がプロアスリートとして活躍できる期間は短い。引退後の人生のほうが遥かに長く、セカンドキャリアをどうするかは彼らにとって切実な問題だ。

 大相撲の場合だと引退後のエリートコースは、年寄株を取得して角界に残ること。だが、これはモンゴル出身力士には当てはまらない。

 最高位が幕内以上のすでに引退しているモンゴル出身力士は21名。そのうち日本国籍を取得して親方になり相撲協会に在籍しているのは、元白鵬の宮城野親方と元鶴竜の音羽山親方の横綱2人のほか、元朝赤龍の高砂親方、元旭天鵬の大島親方、元翔天狼の錦島親方の5人となっている。

 ちなみに相撲協会の役職は、理事長、理事、副理事、役員待遇委員、委員、主任、年寄の順で、モンゴル勢でいちばん高いのは鶴竜、朝赤龍、旭天鵬の委員。翔天狼と、弟子の暴力問題の監督責任を問われて部屋の解散と2階級降格処分を受けた宮城野親方はいちばん下の年寄。協会幹部に出世している者はいない。

「宮城野親方に関しては予想を上回る重い処分だったため、外部から疑問の声が上がっています。現に彼の出世の道は事実上閉ざされ、退職の可能性も囁かれています。モンゴル勢ばかりでなく、協会に残って幹部まで出世した外国人力士はゼロ。これが現実です」(スポーツ紙記者)

 一方、角界離脱組では元横綱・朝青龍は、モンゴル国民投資銀行をはじめ、数十社の企業を束ねる財閥「ASAグループ」のトップ。同じく元横綱の日馬富士は、ウランバートルで小中高一貫校「新モンゴル日馬富士学園」を設立して理事長となり、今では人気の名門校となっている。

 また、史上初のモンゴル人関取として知られる元小結の旭鷲山は、08年から4年間は国会議員を務め、大統領補佐官を担当。現在は実業家として複数の会社を経営している。

「他にも元前頭の荒鷲はモンゴルと日本、米国で不動産を扱う会社の代表で、同じく元前頭の旭秀鵬も母国で貿易会社の社長。付き人への暴行という後味の悪い形で引退した貴ノ岩もラジオ局と牧場の共同経営者です」(同)

 こう言ってはなんだが角界を離れた者のほうが成功しているようにも思える。少なくともモンゴル人力士においては協会残留が勝ち組ではないようだ。

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