2000年以降に著しい発展を遂げ、中東の経済・金融の中心地となったアラブ首長国連邦(UAE)最大の都市ドバイ。最近では「ガーシー」こと東谷義和被告、国際指名手配中の高級腕時計シェアリングサービス「トケマッチ」の元社長・福原敬済容疑者の逃亡先という負のイメージがついてしまったようだが、もともとドバイは富裕層の移住先として人気が高い都市だ。
その大きな理由の1つに、税金がほぼかからないタックス・ヘイブン(租税回避地)であることが挙げられる。今でも世界中から裕福な外国人が移住しており、現地では不動産の建設ラッシュが続いている。
「ドバイ土地局が発表する住宅販売価格指数を見ると、17年から緩やかに下がっていましたが、21年の後半から上昇に転じ、現在は過去10年でもっとも高い水準です」(経済誌記者)
ちなみにここ数年、ドバイで最大の顧客となっていたのはロシアの富裕層で、ウクライナ戦争の影響もあり移住や不動産の購入件数は急増した。ただ、開戦から2年が経って、さすがにロシアの顧客も鈍化し始めているという。それでも建設ラッシュが依然として続いているため、住宅が飽和状態に陥っているとも言われる。
「数字の上では好景気が続いているように見えますが、『ただの見せかけ。不動産バブルははじける寸前』と懸念する不動産関係者や投資家は少なくありません。実際、物件購入後も現地に定住する人は一部に過ぎず、賃貸収入を得ようにも入居率はそこまで高くありません。ドバイの不動産の平均利回りは、アパート型、ヴィラ型ともに4~6%程度。投資対象としてウマ味がなく、それを理由に去ってしまう富裕層も後を絶ちません」(前出・記者)
また、景気とは別の理由から見切りをつけたセレブたちもいるという。
「ドバイは世界でも有数の超監視社会。日本や欧米の大都市をはるかに上回る監視カメラの数で、街には死角がないと言われるほどです。ネット上の検閲も中国並みに厳しく、現地ではLINEなど複数のSNS、スカイプやWhatsAppといった通話アプリも使えません。体制批判はNGで外国人投稿者でも逮捕されています」(前出・記者)
また、ドバイには「秘密警察」が存在しており、東谷被告の身柄を拘束したのも彼らだったことが、昨年12月の公判の中で明かされている。
「徹底的な監視社会は、一方では治安が良いとも言えますが、セレブだけでなく一般市民も厳しい監視体制に居心地の悪さを感じているといいます。景気が良いうちはいいのですが、少しでも悪化すれば、今以上にドバイに見切りをつける人が増えるでしょう」(前出・記者)
セレブが優雅に暮らす美しい街と思われがちなドバイだが、必ずしも理想郷というわけではないようだ。