サビエル・バティスタ外野手がドーピング検査で陽性反応が出た。広島は“3番バッター”を欠いた苦しい試合が続いているが、そもそもプロ野球界のドーピング検査とは、どんなものなのか?
過去には“クロ”の検査結果が出た外国人選手もいたが、今回のバティスタの一件で「まだやってたのか」と思ったプロ野球ファンも多かったはず。そう思えるのは日本のプロ野球界がクリーンだからだが、その検査の内幕を聞くと「バティスタは運が悪かった」と思う人もいるかもしれない。
「検査が始まったのは、2007年。メジャーリーグの筋肉増強剤などの事件を受け、日本も先駆けてクリーンであるべきと考え、同時に国際試合に備えるために行われました。2カ月に1度のペースで、抜き打ちで被験者を選んで検査をしています」(球界関係者)
過去の五輪野球、WBCに出場した日本代表選手は全員、検査を受けたが、「一度も検査を受けずに引退してしまった選手も少なくない」という。NPBのドーピング検査は、こんなふうに行われるそうだ。
まずシーズン中、セ・パ公式戦の行われている全球場にNPBスタッフがやってくる。同日、同時間帯に、である。試合前に両チームのフロント1名ずつが呼び出され、くじ引きをさせられる。たとえば、巨人対阪神戦の行われている東京ドームで行われるときには、阪神職員が巨人選手を、巨人職員は阪神選手を誰にするかでくじ引き抽選を行う。
そこで、両チーム2名ずつの被験者が決定される。試合後、被験者が誰になったのかが両ベンチに伝えられるのだが、検査が終了するまでの間、被験者以外の選手も球場を出ることが許されない。
「けっこう待たされるんですよ。被験者はNPBスタッフの前で、ほぼ全裸状態にさせられ、そこで用を足すんです。尿を試験管2本分、それを一度に出さなければやり直しとなります。恥ずかしいからか、なかなか規定量が出ない選手も。それで時間がかかってしまうんです」(同前)
くじ引きで被験者が決まるので、平等で厳格な検査が行われているとは言いにくい。また今回、陽性反応が出たバティスタの検査は6月に行われたもの。約2カ月が経過してから広島球団に「疑いアリ」が通達されたのだが、NPBスタッフが採取した尿を専門の検査機関に持ち込み、そこで調べてもらうため、時間がかかったのだそうだ。
バティスタは8月29日までに弁明を終えた。内容によっては名誉回復のチャンスはあるだろう。だが、くじ引きで被験者が決まるという方法を聞かされると、自業自得はもちろんだが、運がなかったと言えなくもない。
(スポーツライター・飯山満)