テリー 今、お弟子さんはいるんですか。
伯山 います。今は3人ですね。
テリー 伯山さんぐらいになると、もう何百人と来るんですか。
伯山 いや、さすがに何百人は(笑)。4、50人は来てると思いますけど。
テリー 採る、採らないどこで決めるんですか。
伯山 やっぱり、最初のインスピレーションですね。出会って「弟子にしてください」って言った時の空気感というか。単純にタイミングもあります。
テリー どういう人が来るんですか。
伯山 いろんな人が来ますよ。浅草演芸ホールにお客様の通路があるんですね。そこを通ろうとしたら、缶コーヒーを買ってる40代ぐらいの人がいて、手に2本持ってて。で、「あ、伯山さん」って言うから、「ありがとうございます」って言ったら、「弟子にしてもらえませんか」って。
テリー アハハハハ!
伯山 「えっ、缶コーヒーからの?」と思って(笑)。そういう人をカウントすると、もっと多いかもしれないですね。
テリー もちろん、その人は採ったんでしょう?
伯山 採りませんよ(笑)。あと、可愛かったのが地方から来た子で、ちょっと空気感が合わなかったんですよね。
テリー どんな風に?
伯山 21、2の子だったんですけど、「ごめんね、採れないんだよ」って言ったら「ええっ!?」って言ったんですよ。「断られることをまったく想定してないのかよ」と思って。
テリー アハハ、愛嬌はあるけどね(笑)。
伯山 要するに「ある程度、常識がないとこの世界で通じないかな」という。でも今、10代後半とか20代前半の子って、みんな未熟というか、普通の便せんで手紙をくれればいいのに、見たこともない変な亀のキャラクターの便せんでくれたりするんですよ。「師匠」という、よくわかんないものにコンタクトを取る時の作法で色々なものが出ますね。でもみんな可愛いんですけど。ただ向いているかどうか判断するのはその人のためでもあるので。
テリー 今、伯山さんは講談界を1人で背負ってると思うんですね。
伯山 いやいや、まったくそんなことないですけど。
テリー これから講談師としてどんなことをやっていこうと思ってるんですか。
伯山 今、うちの師匠(神田松鯉)が81歳なのですね。だから、今のうちにできるだけネタをいただきたいと思ってますね。僕も今、40歳ですけど、覚えられるのは50歳くらいまでかなと思うので。
テリー 今、ネタ数はどのぐらいなんですか。
伯山 200ぐらいです。
テリー すごい!
伯山 でも、うちの師匠は500なんですよ。まだ全然継承できてないんです。だから、3人の弟子がどう育っていくかっていうのと、師匠から早めにネタを教えていただくっていうのは大事ですね。
テリー お弟子さんというのは、どのぐらいで一人前になるんですか。
伯山 やっぱり、どんなに早くても真打になるまで15年ぐらいはかかりますよね。他のジャンルより時間はかかりますね。
テリー そうか、そんなにかかるんだ。
伯山 だから、これからうまく講釈師が増えて、お客様も増えた頃に「講釈場」という、講釈専門の小屋を作りたいとは思います。30年か40年後ぐらいになるでしょうけど。これは僕だけじゃなく、講談界みんなの悲願かなと思います。
◆テリーからひと言
いやぁ伯山さん、さすがだな。あまりにも立派で話聞いてたら俺、落ち込んじゃったよ(苦笑)。新作で「長嶋茂雄講談」、どうですか。ぜひトライしてください。
ゲスト:神田伯山(かんだ・はくざん)1983年、東京都生まれ。2007年、三代目神田松鯉に入門し、「松之丞」に。2012年、二ツ目昇進。2020年、真打昇進と同時に「六代目神田伯山」を襲名。「神田伯山のこれがわが社の黒歴史」(NHK)、「問わず語りの神田伯山」(TBSラジオ)にレギュラー出演中。YouTubeチャンネル「神田伯山ティービィー」にて動画配信中。最新著書「講談放浪記」(講談社)発売中。