世界50の国と地域に90校ある文科省認定の日本人学校。だが、ロシアにあるモスクワ日本人学校は、現在存続の危機に瀕している。もちろん、その原因はロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻だ。
現地で独自取材を行った北海道文化放送が8月16日に配信した記事によると、同校にいる教員は校長と教頭のわずか2人。今年度は2000万円の赤字を計上しており、学校運営関係者の「このままだと学校運営は立ち行かなくなります」というコメントを交えて伝えている。
「ちょっとややこしいのですが、海外の日本人学校は義務教育施設であっても公立学校ではないんです。そのため、独立採算制とまでは言いませんが、ある程度の収益性が求められています」(日本人学校事情に詳しい教育専門誌編集者)
同校ホームページによると、モスクワ日本人学校の入学金は1万7500ルーブル(約2万7000円)で、1ヶ月の授業料は2万5000ルーブル(約3万8000円)。生徒数はウクライナ侵攻前には112人だったが、今年度は小学部・中学部合わせて26人。つまり、授業料だけで月に300万円以上減っていることになる。
「しかも、日本に一時退避した教職員を呼び戻すこともできず、現在はほとんどの授業をオンラインで行っている状況です。モスクワは『渡航中止勧告』が解除されておらず、国も派遣を認めることができないんです」(前出・編集者)
ちなみに同校が開校したのは冷戦真っ只中の1967年。現在も当時と同じ建物を使用しており、校舎やグラウンド、体育館をはじめとする施設はイタリア人学校やスウェーデン人学校、フィンランド人学校と共用。そのため、学校同士の国際交流も盛んで、保護者からの評判も良かったという。
しかし、いくら国からの補助があってもここまで生徒が減ってしまうと学校経営はますます厳しくなる。このまま本当に廃校なんてことにならなければいいが…。