ソニーのプレイステーションと言えば、19年には「史上最も売れた家庭用ゲーム機」としてギネス認定されたように、最強のゲーム機として知られる。
「マイクロソフトの独自調査によれば、同社のXboxとの比較で、世界全体ではシェア7対3でプレステが圧倒しているとのことです。地域別では、欧州で8対2、日本で96対4。しかもこの数字は20年間も揺るぎないものらしく、プレステが強すぎて対抗できないというのが実情でしょう」(経済ジャーナリスト)
そこでマイクロソフトが行おうとしたのが、アメリカのゲームソフト制作会社「アクティビジョン・ブリザード」の買収だ。同買収ではマイクロソフトが22年1月に、687億ドル(約9兆5800億円=当時)で買収完了を発表したものの、その大型買収ぶりにケチがついた。各国の規制委員会が、ゲーム市場の競争を阻害するとの疑いから調査を開始し、買収完了に「待った」をかけたのだ。実はマイクロソフトが対プレステでのシェア率の比較数字を明かしたのも、買収を認めるよう訴えた欧州委員会の公聴会の場でのことだ。
この買収が成功すればマイクロソフトはゲーム会社の売上で、テンセント、ソニーに次ぐ第3位となり、それゆえ、発表後にはソニーグループの株価が暴落し、時価総額が2兆円も減るほどのインパクトがあった。ただし、いまだに最終的な結論は出ていない。アメリカでも米連邦取引委員会(FTC)とマイクロソフトが買収の差し止めを巡って争っているのだが、そんな中、とんでもない発言が飛び出した。
「裁判所にはマイクロソフトから様々な文書や発言を裏付けるメールなどが提出されていますが、その中で同社は、スクウェアエニックスやセガの買収も検討していたとされます。日本におけるシェア拡大と、スマホゲームへの進出も視野に入れていたようですね。しかも、こうした買収攻勢をかけることで『ソニーを廃業に追い込むことが可能な立場にいる』というメールの存在も明らかになりました。さらに、アクティビジョン・ブリザードの買収前には、100以上のゲーム会社を買収先候補としてリストアップしていたといいますから、同社の貪欲な姿勢がうかがえます」(前出・ジャーナリスト)
4月に英国は競争・市場庁が買収を認めないとしたが、EUは条件付きで認めるなど、対応は二分している。一方のソニー側は、買収が成立した場合は、アクティビジョン・ブリザードにはプレステの次期モデル「プレイステーション6(仮)」のハード情報を提供しない意向であることが6月23日に明らかになっている。
ゲーム業界の覇権をめぐる争いは、そのまま1つのシミュレーションゲームになりそうな二転三転の展開を見せているのである。
(猫間滋)