【暗雲のゲーム業界】開発受注側にも不況が及び始めた“コンテンツ細り”の危惧

 ゲーム開発受託大手のトーセが7月4日に公表した第3四半期決算では、売上高が前期比マイナス27.6%で、営業損益は5億9900万円の赤字だという。前期は4億4700万円の黒字だったので、急速に業績が悪くなったことが分かる。

 と、あまり世間に知られていないゲーム開発業者の決算がどうしたとの声もあるだろうが、そこからは業界の苦境が見て取れる。

「というのも、急速に業績が悪化した理由が、受注先のクライアントでのゲーム開発中止が相次いだことが大きな一因だからです。受託会社ですから、“川上”のゲーム開発業者の経営環境が悪くなれば、自然と影響は川下にも及ぶ。トーセは開発受託専門では最大手で、受託先もソニーやカプコンなど錚々たる企業ばかり。しかも44期連続黒字決算という超優良企業なだけに、ゲーム開発業界を巡る環境が確実に思わしくないことが分かります」(経済ジャーナリスト)

 そこで3月に出揃った大手ゲーム企業の第3四半期決算(23年4~12月)を見ると、バンダイナムコ、スクウェア・エニックス、セガサミー、コーエーテクモが減益。その中でもバンナムに至ってはなんとマイナス96.5%で、セガサミーも58.3%のマイナスだった。さらにスクエニでは4月に、24年3月期に221億円の特損を計上すると発表。理由として、開発中のゲーム開発を止めるためとしていたのだから、トーセはモロに煽りを食らったかっこうだ。

「同じゲーム開発では、gumiが6月7日に4月期の連結決算を発表し、59億円の赤字でした。同社も前期は4億4000万円の黒字で、特に直近の2~4月の3カ月で48.3億円の赤字なので、やはり急速に悪化。そのため今後は当面、オリジナルタイトルのゲーム開発は行わないとしています」(同)

 スクエニの開発中止は、これまではドラクエやFFといった強力IPに頼っていた開発の「選択と集中」を行うためだった。ゲーム開発は当たれば大きいバクチ的な要素も孕むわけだが、体力があったために回すことができた。ところがコロナ禍の巣ごもり需要も落ち着いたなか、ゲーム会社にはスリム化が迫られている。

 ただ、今後もある程度確実に売れるであろう既存IPに頼ったゲーム開発になるだろうことは予想に難くなく、ともすればどのゲームも似たり寄ったりなタイトルばかりになるかもしれない。

(猫間滋)

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