ロシアがウクライナに侵攻してから、まもなく1年。相変わらず、プーチン大統領による核兵器使用の脅威が懸念される中、仮にアメリカとロシアの間で核戦争が勃発した場合、地球自体が核の冬に覆われ、世界の人口が 50 億人減少するという研究結果が発表され、世界に衝撃が走ったのは昨年のことだ。
ところが、今度はニュージーランドのオタゴ大学研究スタッフが、核戦争や巨大火山爆発・小惑星衝突などによる突然の大災害に見舞われても、生き残れるとみられる国々を分析。学術誌「リスク・アナリシス」に記事を掲載し、話題になっている。
「英ガーディアン紙が9日に報じたものですが、記事によれば、研究スタッフは食料生産やエネルギー自給率、気候など合計13の要素について、38カ国を対象に評価。結果、1位がオーストラリアとニュージーランドで、以下アイスランド、ソロモン諸島、バヌアツという分析結果が出たそうです。分析によれば、これらの国々は自国内で農業生産が盛んなため、核戦争が発生した場合でも食糧難になりにくく、また、地理的にも放射能の影響を受ける可能性が最も少ないとされました」(全国紙記者)
さらに、オーストラリアの場合は、インフラや医療、エネルギー資源が充実していることが強み。ニュージーランドは、日光が遮られて気温が下がっても、周囲の海が急激な気温低下を防ぐ役割をはたすこともわかったという。
「逆に大災害時に被害が最も大きいと予想される国、つまり『生き残れない』とシミュレートされた国は、中国、ロシア、米国など。むろん根拠としては直接的な核攻撃の標的となりやすいことに加え、核戦争で産業システムが崩壊した場合、自国での食料生産割合が壊滅的なダメージを受け、大半の人々が死滅する恐れがあるというのです」(同)
実は、昨年夏にも米ラトガーズ大学の研究者らが、雑誌「Nature Food」に原子爆弾が都市や産業の中心地に投下された場合における、核紛争後のシミュレーションを発表。それによれば、想像を絶するような大規模火災が起こり、有毒物質が地球を覆い、それが世界の大気を汚染し、気候変動により作物や海産物が減少して食糧難が起こるという。
「この時の発表でも、国民1人あたりの1日に必要とするカロリー消費量を維持できる国として、オーストラリアとアルゼンチンは他国よりも、被害は少ないだろうと分析されています。ただしニュージーランドについては被害は少ないものの、アジア諸国から難民が押し寄せる可能性が指摘されています。いずれにせよ、1発の核をきっかけに核戦争が勃発すれば、間違いなく地球の環境はズタズタに破壊される。大国の指導者たちには、そのことを胆に銘じてほしいです」(同)
地球全体が核の冬に覆われないことを願うばかりだ。
(灯倫太郎)