これまでは医療機関での受診後に、紙で発行されていた処方箋が、医師法などの関連法案の改正により、23年1月からは電子処方箋の運用が始まる。
紙資源の節約にもなり、利用者にとってもスマホやタブレットで見られるようになるなど、利便性も向上するが、この変更に戦々恐々としているのが、街の調剤薬局だという。実は、電子処方箋導入のタイミングに合わせて、アマゾンが調剤薬局業界への参入を目指しているからだ。
アマゾンジャパンは13年9月、最高裁が一般用医薬品のネット販売の規制を無効とする判決を出したことを受けて、風邪薬や漢方薬などの第2類医薬品の販売を開始している。17年5月には「ご使用者状態チェック」への回答、「お薬の説明と確認」の内容に目を通したユーザーに限り、一般用医薬品の中でも副作用のリスクが高い第1類医薬品の取り扱いも始めた。
「これらはいずれも市販薬でしたが、今後、アマゾンが処方薬の販売を始める可能性は高いのです」(医療ジャーナリスト)
実際、米国では、20年11月からアマゾンが運営するオンラインの調剤薬局「アマゾンファーマシー」による処方薬の販売を開始している。プライム会員には割引価格で提供するなど利用者からは好評で、競合の北米ドラッグストアチェーン大手の「ウォルグリーン」や「CVSヘルス」は窮地に立たされている。
「日本でも日本経済新聞が9月5日にアマゾンジャパンの処方薬販売事業の参入検討を報じると、調剤薬局大手の『アインホールディングス』や『日本調剤』などの株価が翌日一斉に下がりました。アマゾン参入で調剤薬局が大打撃を受けるのは必至であり、これまで薬剤師は安定して高収入を得られる資格職でしたが、今後は仕事を失う人が出てくるかもしれません」(前出・医療ジャーナリスト)
「アマゾン薬局」がこれまでの医療の常識まで変えてしまうのかもしれない。
(トシタカマサ)