GAFMが次々と…米テック企業の大量解雇が日本経済に及ぼす深刻影響

 11月にはMETA(旧フェイスブック)が1万1000人、今年に入って1月5日にアマゾンが1万8000人、そして18日にマイクロソフトが1万人、20日はグーグルの親会社アルファベットが1万2000人。これらは昨年末から今年にかけてアメリカのハイテク企業が発表した大量レイオフの人数だ。あたかも慣行かのように、大量解雇が行われている。

「主な理由は簡単に言って雇い過ぎたからです。米ビッグテック企業は世間的には未曽有の危機だったコロナ禍にあって、巣ごもり需要の高まりで非常な追い風になりました。そこで過度な人材確保が行われたわけですが、実際、過剰人員を雇用できるくらい儲かったわけです。ところがアメリカ経済ではリセッション(景気後退)の到来が予測され、既にその様相があらわれつつあるわけですが、今週から続くハイテク企業の決算発表では業績悪化が懸念されています」(経済ジャーナリスト)

 だからこのタイミングに大量解雇が相次いだのだという。すると各企業の株価は上がった。アルファベットでは20日に大量のレイオフが発表されると株価は5%近く上昇し、時価総額を6.5兆円も引き上げた。本来は非情なレイオフも今回は株価対策の〝即効薬〟の一面も見せていて、この時期にあって過剰人員を切るのは当然とばかり、株主の評価も高いというわけだ。

 一方で大量解雇は当然、多くの人が失業することになるので、より一層リセッションを加速させることにもなる。昨年12月に米求人サイトの「モンスター」が行った調査では、96%の人が23年に新しい仕事を探すと答えたというから、アメリカの雇用の流動性には驚くほかない。ほぼ全員ではないか!

 海の向こうばかりの話なら良いが、心配されるのは日本への影響だ。なにせ「アメリカがくしゃみをしたら日本は風邪をひく」と言われるくらいだ。ただ国際通貨基金(IMF)などは、昨年から全世界的に低成長のリセッションを想定しており、その中で影響が軽微な日本経済は相対的に浮上すると予測していて、大方の見方もだいたい同じだ。

 だが、1月19日に財務省が発表した、22年の日本の貿易赤字「約20兆円」という数字が落とす影は、世間が言うより意外に大きいかもしれないという。

「22年通年で19兆9713億円の赤字で、1979年以来最大。過去最悪だった14年の12兆8000億円のおよそ1.5倍という数字です。もちろん原因としては資源高騰と円安に求められますが、今後はそれだけでは済まない可能性があります。というのも、世界的なリセッションでアメリカ、欧州に元気がなく、中国もまた様々な問題から成長が鈍化しているわけで、これら主要貿易先への輸出はずっと細ったままの状況が続いているからです」(同)

 つまりアメリカだけでなく、周りを見渡せば皆がくしゃみをしているわけで、まるでゼロコロナを解禁した中国のような状況なのだ。そんな中、1人健康でいることなど果たしてできるのだろうか。

(猫間滋)

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