ロシアのプーチン大統領による核使用の懸念が広がる中、10月13日配信のニューズウィーク(日本版)に「ゴキブリが核戦争をも生き延びる理由」と題する興味深い記事が掲載され、話題になってる。
記事によれば、近年、オーストラリアのロード・ハウ島で、ネズミのせいで80年以上前に絶滅したと思われていたキクイゴキブリの固有種が発見され、ゴキブリ研究の第一人者であるロンドンの昆虫学研究者ポール・エッグルトン氏が、
「ゴキブリは哺乳類より放射能の影響を受けにくい。細胞は分裂するときに放射線のダメージを受けやすいが、昆虫は細胞周期が長い。哺乳類の細胞に比べて分裂の頻度が少ないので、突然に大量の放射能を浴びても影響が少ない」
と語ったことで、「ゴキブリ最強神話」に再び火がついたのだ。昆虫に詳しい科学ライターが語る。
「ゴキブリが地球上に出現したのは、およそ3億年前の古生代石炭紀。人類の祖先が現れたのが約20万年前とすると、その歴史は人間の1500倍以上になります。さらに、彼らはこれまでに地球上で起こった様々な環境変化に耐え、その間も、ほとんど姿形を変えず生き延びてきた。それが『生きた化石』とされるゆえんなんです」
しばしSF小説や映画の世界で取り上げられる「核戦争と人類滅亡」というテーマにも、すべてが朽ち果てた廃墟のなかで、元気に動き回るゴキブリの姿が登場するが、
「これは、原爆が投下された広島と長崎で実際に『ゴキブリを見た』という報告があったことが始まりだとされていますが、実はかつて、この不確かな『都市伝説』をアメリカの人気ドキュメンタリー番組『Discovery Channel』が科学的に検証したことがあるんです。この時、ゴキブリに照射された放射線量は1000rad、1万rad、10万radの3種類。すると、人間が10分で死に至るという放射線量1000radでも、半数のゴキブリが生き残り、1万radで10%が生存、すべてが死んだのは10万radという実験結果が出たのです」(前出・科学ライター)
こうして、「ゴキブリは人間よりも放射線に強く、核戦争で人類が滅亡しても生き残っている可能性がある」という推論があらめて裏付けられたとして大きな話題となったのだった。
「ここ数年、殺虫剤に耐性を持った『スーパーゴキブリ』も出現、殺虫剤メーカーを大いに悩ませていると聞きます。さらに、彼らは糞や髪の毛、フケなども餌に出来るし、プラスチックなどの固いものも好物で、体の中に脂肪体というエネルギーを蓄えているため、種類によっては飲まず食わずでも1カ月近くも生きられる。まさに史上最強と言っても過言ではない脅威の生命体だということです。10万radを浴びたらひとたまりもありませんが、核戦争後に生き残る確率は、人間よりスーパーゴキブリのほうがはるかに高いでしょう」(前出・科学ライター)
いやはや、こんな世界が現実にならないことを祈るばかりだ。
(灯倫太郎)