営業時間は17時からわずか数時間。売り切れ御免ですぐ店じまいするので巷では“幻の焼き鳥店”と呼ばれた、創業98年の歴史を持つ東京・東日本橋の「江戸政」。メディアでもたびたび紹介されていた名店だが、看板メニューの「生つくね」に対し、《食中毒の危険があるのでは?》とネットで騒がれて炎上。それを受けて店側は20日、同日をもって閉店することを突然発表している。
生肉料理に関しては食品衛生法が12年に改正され、牛肉の生食は全面禁止。それまで焼肉店の人気メニューだった牛肉の「生ユッケ」や「レバ刺し」は食べられなくなり、続いて15年の改正では豚肉の生食もNGに。
一方、鶏肉の生食は現在も規制対象になっていないが、東京都福祉保健局のホームページでは「生食用の基準はありませんが、加熱調理が前提です」と書かれている。同店の生つくね提供は違法でないのであれば、店を畳む必要はないと思うが…。
「牛肉や豚肉に比べるとリスクが少ないとはいえ、鶏肉もサルモネラ、カンピロバクターなどの食中毒の危険性があります。今回の件に関しては実際に食べた客がSNSに投稿し、それを見たネット上の“正義厨”と呼ばれる人たちが激しく抗議・断罪。それに店主が精神的に参ってしまったのかもしれません」(グルメライター)
そんな中でも、海外の日本料理店では現在も生肉料理を提供している。特にタイでは生食に関する法規制はなく、首都バンコク市内には2000軒以上の日本料理店があると言われ、現在も増え続けている。実際、現地には生つくねを提供する焼き鳥店をはじめ、生ユッケやレバ刺しを出す焼肉店も数多く確認できた。
「駐在員の間でも人気で、男性旅行者の中には夜遊びよりこっちを目当てに来る人もいるほどです」(同)
庶民のグルメだったのはもはや過去のこと。今や高い旅費をかけて海外に食べに行くセレブの食べ物となってしまったようだ。
*写真はバンコクで提供されたレバ刺し