言いたいことも言えない世の中に、炎上覚悟で物申す好評連載に野球解説者の‟エモやん〟こと江本孟紀氏(75)が登場。野球マスコミへの憤懣を赤裸々に激白する!
今日は、野村(克也)さん譲りの〝ボヤキ節〟をさせていただきたいと思います。
野球中継の解説中、アナウンサーが言うと、ついイラッとしてしまうワードが2つある。まず、ひとつ目が「いよいよ100球目です!」だ。
4月には佐々木朗希が完全試合の後、再び完全試合がかかった場面で102球8回降板なんてこともあったけど、決して先発投手の「100球までの球数制限」を問題視してるわけではないし、「100球以上投げろ」と言いたいわけでもない。ただ、俺の現役時代にはなかった概念だし、投手によっては賛否両論ある考え方でしょ。だから「疲れを考慮した」とか言われるけど、「お前、じゃあ投げたことあるのか」と言いたい。
俺が怒りたいのは、いまだ議論の余地がある球数制限ではなく、馬鹿の一つ覚えのように「100球」を繰り返す、マスコミの愚かさなんだよね。
先発投手はマウンドへ立つ前から、完全試合かノーヒットノーランの9回完投を目標にしてるから、「さあ、いよいよ100球目です!」といちいち取り上げられるのは、元投手としてはウザい限り。
もうひとつイラッとするワード、「初球からフルスイング」も理由は同じ。
「初球から積極的にフルスイングしました!」って讃えるようなコメントはどうなの? と思う。投手は初球でも10球目でも、バットを振ってくれてアウトを取るのが一番、楽なんだから。
だから俺は、この2つのワードが出てきたらノーコメントに徹するか、「それがどうした!」とやや怒気を含んで切り返すことにしている。試合前に「100球」と「初球からフルスイング」という言葉を使わないよう、アナウンサーに伝えることもあるよ。それでも中継中にこの2ワードを発したので、試合後にコンコンと説教したこともあったなあ。
「他にボキャブラリーはないんか? コメントが放送されるんだから、少しは考えなさい。オモロないから、そろそろ別の言葉を考えましょうよ」と。解説は中継を面白くしようと意識しないと視聴者が楽しめないし、解説側も少々おちょくりながらしゃべらないと、ツッコミどころがないからね。
とはいえ、アナウンサーと解説者は「番組をできるだけ楽しんでもらいたい」と願う共演者でもある。だからわざと、アナウンサーに「100球」と「初球からフルスイング」を言わせてツッコむ時もあるよ。選手たちがどういうプレーをしようが、俺たちのギャラは変わらないんだから(笑)。成績の良し悪しも、俺たちには一切、無関係だし、面白くできるならと、それだけ。
江本孟紀(えもと・たけのり)野球解説者。1947年7月22日生まれ、高知県出身。「プロ野球ニュース」、「SWALLOWS BASEBALLL!VE」(フジテレビONE)、「ショウアップナイター」(ニッポン放送)他出演中。