江本孟紀が太鼓判!絶品「浅草めし」(2)甘味処なのに麺がうまい

 そうそう「弁天」という蕎麦屋にも行くんですけれど、色んな有名人も通う店で、18年2月に急逝された大杉漣さん(享年66)にも偶然、会ったことがあった。亡くなる3週間前に大勢のスタッフと来られていました。帰り際に挨拶をしたんですが、とてもお元気そうだったから、まさかその数週間後に亡くなるなんて思いもしなかった。

 俺は酒を飲まないから甘味もけっこう好きなんだ。でもね、甘味処の看板を掲げている店の軽食メニューって、けっこう侮れないよ。地元の人たちに愛されている「山口家」は昭和のよき時代が漂う名店。甘味の他にも、夏は「冷やし中華」、冬は「タンメン」を頼むね。少し腹が物足りない時は干瓢巻きや太巻きを食べたりして。他にも俺のユーチューブでも紹介してるんだけど、韓国料理「なると」の「ニンニクの醤油漬け」や「ケジャン」。寿司では「金太楼」の馬道店。ネタは高級なのに価格は庶民的。ランチに行くといいね。

 まだまだ語り尽くせないほどうまい店はあるよ。俺はね、朝、目が覚めた時から〝今日は何を食べようかな〟って1日の食計画を組み立てるんだ。ロケ弁なんてもう論外! 家に帰っても冷蔵庫のあり合わせでは物足りないし、ストレスがたまる。人間は口から〝うまい!〟と感じるモノが入ってこない限りは体も心も育たないんだよ。だから、「金持ちがグルメか」と聞かれれば、「そうじゃない」と答えたいね。俺、長い間生きてきて思うが、食道楽の金持ちなんてまずいない。たぶん、セレブな人は高級店に〝行く〟ことがすべて。味がよかろうが悪かろうが、とにかく高級店に行くことがステータスだと思っているみたい。もっとも連れて行ってもらうのは大歓迎だが‥‥。そういう人に限って口が寂しい。そのかわり、酒はよく飲むけどね。酒飲みは味覚も鈍るから。うちの親父も朝から晩まで日本酒を飲んでいたくちでしたけど、俺、酒飲みは味覚的に信用しません(苦笑)。

 スポーツ選手って〝今日、風邪気味かな〟〝気分悪いな〟っていう時にコーチや先輩に何と言われると思います? ふざけて「走れば治る」ですよ。腹が痛いと言えば、「食ったら治るよ、食え食え!」これでいいんですよ。

 我々の世界、食わない奴は勝てないんです。伸びる選手はやっぱりよく食べる。王貞治さんは食いすぎで胃がんになって、張本(勲)さんなんていまだにご飯3杯ぐらい食べます。野村克也さん(享年84)だって高齢でもよく食べてました。

 以前、カネさん(金田正一・享年86)にゴルフに招待されたら、朝9時半のスタートでも7時集合なんです。到着すると、そこには玉子焼きからキムチや干物が所狭しと置いてある。びっくりして「えーっ! 朝からこれ、食うんっすか?」って聞くと「当たり前だ! 食ってから糞してプレーするのがいい!」って。それが400勝の成績を残した人ですよ。

 食べるモノってやっぱり人生のすべてなんです。いいモノを食べたいから仕事を頑張るわけで、人に勝ちたいと思うから一生懸命になる。生きる源。野球はもちろん、食に関する話はまだまだ語り尽くせないけど、食レポをユーチューブでもやります。見てください!

江本孟紀(えもと・たけのり)野球解説者。1947年7月22日生まれ、高知県出身。「プロ野球ニュース」「野球中継」(フジテレビ)、「ショウアップナイター」(ニッポン放送)、サンケイスポーツでの評論を中心に活動。

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