石川県能登町が昨年、コロナ対策の地方臨時交付金の一部で作ったのが、巨大なスルメイカのモニュメント「イカキング」だった。当初は、地方が時々行うトンデモな税金の使い道として注目と批判を浴びたものだが、あれから約1年、そのイカキングに「6億円の経済効果があった」と能登町が推計を出したことから話題となっている。
まずはイカキング騒動について全国紙記者が振り返る。
「石川県は15年に北陸新幹線が金沢まで伸びたことから、観光地として有名な能登半島にも多くの人が訪れるようになりました。しかし半島は人口減少が著しく、そのため、地域のPRとして名産のイカのオブジェを作ることが20年7月に決定されました。そして昨年4月にくだんのイカキングが完成したのですが、予算2700万円のうち2500万円を国が地方に交付したコロナ対策の臨時交付金から拠出したことが判明し、ムダな目的外使用としてバッシングを浴びたのでした」
この話題は、NYタイムスや英BBCも取り上げるなど、世界的にも報道されたものだったが、じつはちゃんと経済効果があったというのだ。
6億円の内訳はこうだ。まず建設自体の波及効果で900万円。そしてイカキングが置かれた観光施設「のと九十九湾観光交流センター」(愛称・イカの駅つくモール)の来場者のうち、イカキング目当ての人が45%に上り、それを合わせると5億9000万円になるのだという。さらにテレビなどのメディアに取り上げられた注目を広告費換算すれば、18億円にも上るのだとか…。
全国のコロナ交付金の使い道の中には、「着ぐるみ製作」(北海道湧別町)や「国宝『縄文の女神』の陶製レプリカの作成」(山形県舟形町)、「GReeeNの楽曲の動画募集。選ばれた人には宿泊券プレゼント」(福島県郡山市)などといった首をかしげざるを得ないものもあった。その中でイカキングはメディアが多く取り上げたこともあり、炎上商法的に盛り上がった形だ。
「ただし地元では『周辺は賑わっても町全体に恩恵があるのか』といった声もあるようで、結局、使い道としてどうだったのかは疑問が残るところでしょう」(前出・全国紙記者)
経済効果だけではなく、イカキングがコロナ患者やコロナの影響で生活に苦しむ人々、あるいは医療従事者のケアにどれだけ貢献したかという検証も、今後はなされるべきだろう。