昨年12月末、メディア界を激震させる出来事が明らかになった。読売新聞大阪本社と大阪府が、「教育・人材育成」「産業振興・雇用」など8分野で連携し、地域の活性化や府民サービスの向上を目的とした「包括連携協定」を結んだことを発表したのだ。
協定では、大阪府への取材・報道には一切の制限が生じず、優先的に取り扱わないことが取り決められているが、大阪府で最大の部数を持つ読売と自治体の連携に批判が噴出。ジャーナリスト有志の会はすぐさま、
〈報道機関が公権力と領域・分野を横断して「包括的」な協力関係を結ぶのは極めて異常な事態であるだけでなく、取材される側の権力と取材する側の報道機関の「一体化」は、知る権利を歪め、民主主義を危うくする行為に他なりません〉
と抗議、協定の解消を求めている。公権力を監視するべき立場のメディアが、連携協定を結んだ上で大阪府の襟を正す報道ができるのか、懸念を抱かれてもしかたないだろう。奇策とも言える今回の狙いについて、山村氏はこう解説する。
「当然ながら批判の声が出るのも理解できる一方、これぞナベツネ流と思わせるやり方でもありましたね。渡邉氏といえば記者時代に行政だろうが政界だろうが、自分でドカドカと中に踏み込んで、縁を作りながら関係性を持ち、社会や政治を動かしてきました。客観的に取材をして記事を書くという昨今の流れの中、これまでのジャーナリズムやマスメディアになかった形を作り、そこで読売がリードしていこうと考えているのではないでしょうか」
新たな取り組みが吉と出るか、凶と出るかはまだ先になるが、渡邉氏にはもう1つの大仕事があった。
これまで何度も食事の席を共にした安倍晋三元総理(享年67)の宿願でもあった憲法改正だ。その思いは渡邉氏も同じで、「読売新聞」は94年、00年、04年に憲法改正試案を発表している。昨年7月にNHK BS1で放送された渡邉氏の独占インタビューでは、
「今の憲法は本当のリベラリズムの憲法になっていない。いずれ直さなければいけない」
などと、思いを吐露していた。「時の総理も動かす」と言われた男は、盟友の弔いのために動き出すのか。
「17年5月の衆院予算委員会で安倍さんが、『自民党総裁としての(憲法改正への)考えは読売新聞に相当詳しく書いてある。ぜひ熟読してほしい』と発言して、野党から反感を買ったことがありました。それほど2人の距離は近く、憲法改正は共通の目標。ただ、もともと岸田文雄総理(64)は開成高校の後輩でもあり、渡邉さんの思いを十分理解しているはず。できるだけ早く発議するように、今までにないほどやる気を漲らせています」(自民党関係者)
辣腕スクープで政府すら火消しに奔走させる現役バリバリの「ナベツネ」の次の一手が気にかかる‥‥。
*「週刊アサヒ芸能」7月28日号掲載