14億人の国に17億戸のマンションが!? 中国の「不動産バブル」これが実像だ【1】

 中国・上海市が都市封鎖を解除して2週間、上海経済圏がようやく動き出した。
 
 これにより、習近平国家主席は、中国経済が本来の姿に戻って、大きく成長を続けていくと自信満々だ。「中国が世界を頼るのでなく、世界が中国を抜きでは立ちいかなくなる経済秩序を築く(双循環)」と高らかに謳っている。
 
 だが、それは「夢物語」になりそうだ。これから中国では、彼らが経験したことのない経済不況が始まる可能性が高い。こんなことを言えば、多くの人が「いい加減なことを言うな」と呆れるかもしれない。だが、ゼロコロナ政策に固執したことによって、これまで隠されていた危機的な事実がボロボロと表に出てきた。これは大変なことである。
 
 分かりやすく紐解いてみよう。
 
 世界がコロナに襲われる前から、じつは中国経済は大きな壁にぶつかっていた。
 
 ロックダウンの真っただ中、地方の小型銀行で顧客が預金を引き出せなくなるという事態が一斉に起こった。4月下旬に河南省に本店を置く禹州新民生村鎮銀行、上蔡恵民村鎮銀行、柘城黄淮村鎮銀行、開封新東方村鎮銀行で、取引ができなくなった人々が銀行に押し寄せたのだ。銀行側は「システム変更に手間取っている」と言い訳したが、要は銀行にお金がないからだ。

■貧富の差は世界でもトップクラス
 
 金融機関が行き詰まったのはこれが初めてでない。中国全土で“度々起こっている”とするのが正しい。現に、政府は度々起こる金融破綻によるトラブルを防止するために、2015年に預金者1人当たり50万元(800万円)までを保護する預金保険制度を導入している。
 
 では、なぜ地方で金融破綻が始まったのか。
 
 習政権は昨年「共同富裕」というスローガンを掲げているが、現実は貧富の差は世界でもトップクラスである。
 
 中国には現在、海外旅行をできるような中間層を含めて、生活にゆとりのある層が約4〜5億人いると言われる。一方で、中国ナンバー2の李克強首相は2020年の人民代表大会で「中国には月収1000元(1万6000円)以下で生活する貧しい人が6億人もいる」と演説したことがある。
 
 これがこの国の不思議なところだが、中国は人口の多い都市部だけでなく、貧しき末端の村や鎮、例えば河南省鄭州市や貴州省や陝西(せんせい)省の村・鎮にもマンションが林立している。
 
 つまり、中国はひたすらマンションに代表される生活インフラを構築することで成長してきた。その結果、どうなったか? 人口14億人の国に、建設放棄した物件を含めると17億戸分のマンションが計画され、完成したものでも1億戸以上が住み手のないまま空き家状態という、ありえない事態になっているのだ。

 だから、何十何百というマンションが建築ストップし放置されたすぐ隣で、大規模マンションの開発が進められるという、日本でなら到底考えられないようなことが起きている。その象徴が、中国最大級の不動産開発会社「恒大集団」の危機だった。

(松山徳之・ジャーナリスト)

*中国の「不動産バブル」これが実像だ【2】につづく

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