どちらの藤浪が“本当”なのか? たしかなのは、矢野燿大監督の評価と藤浪晋太郎の自己分析が「たいぶ違う」ことだ。
阪神が東北楽天との練習試合に臨んだのは2月19日だった(沖縄・金武町ベースボールスタジアム)。藤浪は二番手として登板し、3イニングを投げて被安打4失点1。良いのか悪いのか、よく分からないビミョ〜な数字だが、矢野監督は厳しかった。
「ボール、ボール、変化球ボール、変化球ボールになって、真っすぐで行く。バッターも真っすぐを狙ってくるし、やっぱりヒットを打たれる」
藤浪の1失点は、カウント3ボール1ストライクから“狙い打ち”されたもの。楽天・田中和は矢野監督の指摘した通り、制球力に苦しむ藤浪を見て、「次は直球しかない」と読みきってのバックスクリーンへの大ホームランだった。3イニングは予定通りとはいえ、アウトカウント9つを取るまでに辿った“一球ずつ”を見ると、「よくぞ、1点でしのいだものだ」というのが、指揮官の感想だろう。
それに対し、試合後の藤浪はこう答えている。「真っすぐも変化球もたくさん使えたし、良かったと思う」——。先発ローテーション入りへの手応えも感じ取っているようだった。
「巨人・菅野智之投手との自主トレで教わったワンシームを試投していたようです。『多少ボールになっても…』と、藤浪は最初から割り切っていたようです」(関係者)
遡ること17日、矢野監督は、一部メディアに対し、藤浪がここまで順調に調整できていることを喜んでいた。期待が大きかった分、19日の不安定なピッチングが許せなかったのだろう。そしてもう1つ、矢野監督は藤浪が新球・ワンシームを試投することを知らされていたのか?という疑問もある。仮に知らされていなかったとすれば、指揮官の怒りの理由は投球内容だけではなかったのかもしれない。
「矢野監督は先発ローテーション入りを目標にする藤浪に対し、『結果を積み上げていくこと』を求めていたのでしょう」(在阪記者)
今季予想されるローテーションは、西勇輝、青柳晃洋、秋山拓巳、ガンケル、伊藤将司など。及川雅貴、アルカンタラ、新人の桐敷拓馬らも奮闘しているが、藤浪は指揮官とかみ合っているのか心配だ。
(スポーツライター・飯山満)