農業人口の減少対策の一環として国が12年度から進めている「農業次世代人材投資資金(旧・青年就農給付金)」。最長5年間にわたって資金援助を得られる新規就農者への手厚い支援制度として知られていたが、来年度からさらく拡充されることがわかった。
同資金は農業大学校などでの研修中の者を対象とした「準備型」、就農後の「経営開始型」の2種類があり、給付額が増加されるのは後者。これまで就農1~3年目は150万円、4~5年目は120万円の計690万円だったが、設備資金として最大1000万円に加え、それとは別に生活費などに充ててもいい用途自由の月13万円の交付金が3年間支給される。つまり、最大1468万円を受け取ることが可能なのだ。
「さらに就農前の研修期間に準備型を利用すれば、2年間で最大300万円となり、合計1768万円。農家は作付け面積の大きさや何を栽培するかで必要な設備のコストが異なります。いくら従来の制度も手厚いとはいえ、就農後に経営が立ち行かなくなって借金を重ねたり、離農するケースも珍しくありません。それを防ぎ、就農者を増やすのが今回の制度改正の狙いです」(専門誌編集者)
ただし、給付期間中に離農すれば、その時点で支給はストップ。また、農作業に従事しない日が年間150日、もしくは1200時間に満たない場合も離農状態とみなされる。その場合は返還義務が生じることになり、負債を抱えてしまうことになるという。
「国の制度以外にも都道府県や市町村の各自治体が独自の支援を行っているところも多く、地域によっては耕作放棄地や住居を無償、もしくは格安で提供といったサポートも得られます。これらも合わせて活用することで失敗のリスクを最小限に抑えられます」(同)
コロナ禍で在宅勤務が可能な企業が増え、田舎暮らしを検討している人も多いが、テレワークではなく思い切って農家に転身という選択肢も案外悪くなさそうだ。