従事者の高齢化と後継者不足が長年の課題となっていた農業。それを解消するために2012年度に創設されたのが農業次世代人材投資資金(旧・青年就農給付金)だ。
結果として新規就農者は大幅に増加。最近の就農ブームを加速化させる要因のひとつになったのは間違いなく、今のところは成功と言えるだろう。特に新たに農業を始める場合、多額の初期投資が必要になるが、同制度はそんな人を対象としており、しかも給付金の支給額というのがかなり手厚いのだ。
給付期間は申請者本人の前年度の収入が350万円を超えたら終了などの条件が設けられており、最長で5年。年150万円となっているが、夫婦で就農する場合は給付額が1.5倍の年225万円にアップする。
さらに就農前に最長2年間、研修を受けることも可能でその場合も年150万円ずつ交付を受けられる。つまり、研修期間も含めると、7年間で最大1425万円。これは個人を対象とした国や自治体の給付金としては極めて高額だ。
ちなみに全国農業会議所がまとめた「新規就農者の就農実態に関する調査(平成28年度)」によると、就農1年目の設備費用の平均額は569万円。ただし、これには土地取得や住宅にかかる費用は含まれていない。
実際に就農しても数年間は年収100~200万円台が続くことが多く、切り崩せるだけの生活費も確保しておかなければならない。それでも就農事情に詳しいライターは、「狭い農地でも高収益の作物は多く、やり方次第では設備投資を抑えて給付が終わるまでに経営を軌道に乗せることは可能」と話す。
また、小中学校向けの農業研修を受け入れたり、エコツアーの実施や○○狩りといった観光農園化など農作物の出荷以外の事業収入を得て収入を増やす人も多いそうだ。
「それに給付金や自己資金だけで足りなくても補助制度は他にもありますし、農業事業者向けの無金利・低金利の融資も複数用意されています」(前出・ライター)
新規就農はそんなに生易しいものではないが、給付金をはじめとする各種のサポートが充実しているのも事実。本気で興味があるなら検討してみる価値はあるはずだ。
(トシタカマサ)