川原氏は自身の経験を元に口を開く。
「以前、バラエティー番組で『賞味期限切れの材料を使うことは?』と聞かれて正直に『あるよ』と語ってしまったことがあります。しかし、これはたいていの店でやってること。例えば今日で賞味期限が切れる牛乳があったとして、深夜0時になったら廃棄しますか。期限を1秒過ぎたら使えないなんて、ナンセンス。そもそも、野菜に賞味期限のシールなんて貼られてますか。逆に賞味期限内でも危ないと思ったら使いません。プロの感覚、判断が大事だと思っています」
さらに、3店舗のラーメン店を渡り歩いた元従業員はこう証言する。
「2軒目に働いた店は無化調を謳っていましたが、スープに業務用うま味調味料を入れていました。スープの仕込みはオーナー店長が自分でやっていて、厨房の棚の中にあるのを知っていますし、実際に入れているところを見たこともあります。つまり、無化調がウソってことになるので、店長に『大丈夫なんですか』って尋ねても『他の店だってやってんだから』って、気にする様子はなかったです。ただ、そんなこんなで折り合いが悪く、私も1年半ほどで辞めてしまいました」
では、儲けにどれほどの違いが出てくるのか。都内で約10年間、「完全無化調」をウリに複数店舗を切り盛りする店主に話を聞くと、
「うま味調味料を使用しない分、うちの店は、かえしに厚削り節や煮干しをふんだんに使っています。無化調だと原価率が高いと思われがちですが、実はあまり変わらないですよ。うちは1杯750円で提供してますが、採算は取れていますから。スープ作りで言えば、鶏ガラを大量に煮込むほうがコストはかかりますが、それは無化調じゃない店でも同じじゃないかな。いちばん原価がかかるのはチャーシューですね。そもそも豚肉の原価が高いですから」
一方、元従業員はスープに使用される水についても、こんな裏話を明かしてくれた。
「大々的にアピールしていたわけじゃないですけど、スープに名水を使っていて、店内に貼り紙を出していました。ただ、スープに使う水がすべて名水ってわけじゃなく、ごく一部。店は地方にあって、その地域は水道水も比較的おいしいと言われていたとはいえ、使用するのはほぼ水道水。ポリタンクに溜めている名水をちょっと足している程度でしたよ」
名水を使用していることには違いないが‥‥。ラーメン店主の意見はこうだ。
「うちの店は特に水にこだわっているわけではないですが、『軟水や硬水などを使用しています!』と宣伝したとしても、味の違いに気づくお客さんがどれほどいるのか疑問です。そう考えると、名水を使っていますと言われたらお客さんは信じると思いますよ」
まるで、客の味覚が試されているようだが‥‥。
*「週刊アサヒ芸能」11月11日号より。(3)につづく