収穫はツーシームのキレ味だけではないようだ。
北海道日本ハムファイターズの斎藤佑樹投手が千葉ロッテとの二軍戦で今季2度目の実戦登板を果たした(7月21日)。
1点リードで迎えた7回表に4番手として登板したのだが、結果は1回1被安打1四球1失点。後続投手も打たれ、日本ハムは逆転負けを喫してしまった。
試合後、斎藤は「久しぶりに打たれた悔しさを感じた」と、復活への階段を順調に上っていることを明かしていた。
「最速は138キロ、前回登板よりも6キロも速くなりました」(取材記者)
同日のアウトは、全てツーシームで打ちとったもの。「復活の新変化球」と伝えたメディアもあったが、それよりも成果は心境の変化だろう。
「2013年に右肩を故障した後、一時期、シュートを習得しようとしていました。その前から首脳陣は『シュートを覚えろ』と勧めていたんですが、当時は内角を攻めることに抵抗があったようです」(当時を知る関係者)
ツーシームとは、シュートに近い軌道を描く変化球だ。
当時を知る関係者によれば、14年春季キャンプ、対外試合などでシュートを投げる場面があったという。しかし、そのころの斎藤は「内角を攻めるのは強い直球を投げられない投手」というヘンな先入観があり、同時に「強い豪速球を投げる投手像」を目標にしていた。
「豪速球を投げる目標に固執し、シュート習得は途中でやめてしまいました。首脳陣も本人任せにしてきたというか、斎藤は周囲のアドバイスにも聞く耳を持ちませんでした」(同前)
しかし、一軍で活躍できない時期が長くなるばかり。今回の右肘靱帯断裂で現役生活の危機にも晒され、考え方を改めたようだ。
「斎藤は頑固な性格ですからね」(同前)
相手バッターの内角を攻めるツーシームを多投したのは、豪速球という幻想を捨てた証とも言えそうだ。一軍復帰はまた先になりそうだが、ツーシームに手応えを感じていた。
もうちょっと早く、素直になっていれば……。
(スポーツライター・飯山満)